74話ダンジョン仲間です!
「さて……貴方は?」
祖母の鋭い視線が、ボロボロになりながら立っている直哉に向けられた。
「葛西直哉といいます!」
「そう……これを飲んで回復しなさい」
祖母が投げ渡したのは、超高価な特級ヒールポーションだった。
「えっ、いいんですか!? ごくごく……ふぅ、ありがとうございます!」
一瞬で傷が癒え、元気を取り戻した直哉を見て、祖母はくすりと微笑んだ。
「えっと……直哉君と言ったかしら? 孫とはどこまでの関係なのかしら?」
「? ダンジョン仲間です!」
「……そう。舞香、これは苦労しそうね?」
「もう! お祖母様!!」
真っ赤になって抗議する舞香を微笑ましく見つめた後、祖母の視線が今度は章の手にある刀へと注がれた。
「貴方……その刀……?」
「?」
「……『小虎』ね?」
「えっ?」
「あげるわ。王城家からのお詫びと、孫を助けてくれたお礼よ」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
思わぬ名刀の入手に章が目を輝かせていると、屋敷の奥から従者が慌ただしく駆け込んできた。
「す、すみません! 成彦様が拘束を破って逃げ出されました!」
「……そう。屋敷の敷地内を隅々まで探しなさい」
祖母が冷静に指示を出している頃——裏庭の暗がりを、成彦が必死の形相で走っていた。
「はぁ……はぁ……ここなら、追っ手も……っ」
「どこに行くんですか〜?」
暗闇から、鈴を転がすような愛らしい声が響いた。振り返ると、そこには月光を浴びて佇む忍の姿があった。
「し、忍……!? 僕のものになりに来てくれたのかい……!?」
必死な顔で手を伸ばす成彦。だが、忍は可憐な笑みを浮かべたまま、冷たい声でささやいた。
「ふふ……違いますよ?」
「えっ……?」
ピト。
忍の柔らかい人差し指が、成彦の額に静かに触れた。その瞬間、成彦の瞳から光が完全に消失する。
「これから、私たちの前に二度と現れないでください。それと……回れ右をして、大人しく捕まってくださいね?」
「はい……分かりました……」
忍の命令を深く刻み込まれた成彦はロボットのように回れ右をして、従者たちの待つ方向へとトボトボと歩き出した。
「ふふ……これでもう、兄さんの邪魔はできませんね♪」
忍は可愛らしく首を傾げ、兄たちの元へと何事もなかったかのように戻っていくのだった。




