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73話 守りたい者

「何をしているのかしら!!」


静まり返った教会に、凛とした朗々たる声が響き渡った。


「あっ……お祖母様!?」


ドレスの裾を握りしめた舞香が、ハッと入口を振り返る。


そこに立っていたのは、数名の従者を従え、威厳に満ちた佇まいで佇む王城家の前当主——舞香の祖母であった。


「舞香! 貴方……っ!」


「ごめんなさい、お祖母様……わたくし……」


勝手に挙式を挙げさせられ、暴れて教会を破滅寸前に追い込んでしまった罪悪感から、舞香はギュッと目を瞑り頭を下げた。だが、祖母の口から出たのは、思いも寄らない言葉だった。


「無事だったのね……っ! 本当に良かったわ……!」


「えっ……?」


ぽかんと呆然とする舞香を、祖母は優しく力強い腕でぎゅっと抱きしめた。


「成彦の奴が、貴方を無理やり見合い相手と結婚させようとしていると聞きつけてね……海外の視察先から飛んで帰ってきたのよ!」


「お祖母様……っ!!」


我慢していた感情が決壊し、舞香は幼子のように声を上げて泣きじゃくりながら、祖母の胸へと抱きついた。


「ふふ……よしよし、恐ろしい思いをさせましたね」


舞香の頭を優しく撫でていた祖母の顔から笑みが消え、その眼光が床に転がる成彦へと向けられる。冷徹な威圧感が教会全体を支配した。


「——貴方たち? そこに転がっている成彦を拘束しなさい」


「承知しました、前当主様」


従えていた従者たちが即座に動いた。


白目を剥いて倒れていた成彦は、あっという間に縄でガチガチに縛り上げられ、引きずられていく。


一通りの始末を終えた祖母は、舞香の足元に散らばる焦げ跡と、圧倒的な魔力の残滓に視線を落とした。


「……使ってしまったのね? 『無詠唱魔法』を」


「……はい。約束を破ってしまいました……」


舞香は申し訳なさそうに小さく頷いた。


だが、祖母は咎めるどころか、満足そうに目を細めて微笑んだ。


「いいのよ。それは……貴方に『守りたい者』ができたということでしょう?」


祖母の視線が、ボロボロになりながらも舞香の前で踏みとどまっていた直哉に向けられる。


「これからは、もっと強くなりなさい。己の愛するものを、その手で誇り高く守れるくらいにね」


「……! はい、お祖母様……っ!」


涙を拭い、力強く頷く舞香。その横顔は、教会に入ってきた時とは見違えるほど凛として輝いていた。



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