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72話 ……? 拾いました

一方、教会の入り口付近では、章と忍が成彦の雇った私設警備兵たちと対峙していた。


「忍、下がってろよ?」


「はい! 兄さん!」


忍は言われた通り素直に一歩下がり、壁際に身を寄せた。その瞳は、眼前に広がる光景に歓喜で潤んでいる。


(ふふ……兄さんが戦っていらっしゃる……! いつもは監視の目を通してでしか見られなかったのに、こんなに近くで拝めるなんて……♪)


大剣を振るう警備兵の攻撃を、章は小太刀一本で滑らかにいなし、瞬時に背後へ回り込む。


「兄さん! 右です!」


「おう、助かる!」


忍の的確なナビゲーションに応え、章は振り向きざまに小太刀の柄頭で右からの強襲を叩き伏せる。


完璧なコンビネーション。忍は小さく拳を握り締め、「ふふっ」と可愛らしく微笑んだ。


——それから数分後。


「どうやらあっちも決着がついたみたいですね?」


忍が教会の奥へ視線を向けると、そこには崩れ落ちた壁の前に立つ舞香と、白目を剥いて倒れている成彦の姿があった。


「よし、こっちも一気に片付けるか——って、あれ!?」


章が構え直した瞬間、度重なる猛攻に耐えかねた小太刀の刃が、甲高い音を立てて半ばから真っ二つに折れてしまった。


「クソッ! 刃が折れた……!」


「兄さん! これを使ってください!」


すかさず忍が、いつの間にか腰元に装着している黒く光る一振りの刀を抜き、章へと放り投げた。


「? サンキュ、忍!」


空中で柄を掴む。ずっしりとした重みと、吸い付くような握り心地。


章は反射的に、眼前に迫っていた警備兵の隊長に向かってその刀を横一文字に一閃した。


ズバァァァァンッ!!


「っっっ!?!?」


刃は敵に接触してすらいない。

にもかかわらず、刀身から放たれた漆黒の衝撃波が空気を引き裂き、教会の分厚い石柱ごと警備兵たちを一瞬で吹き飛ばしたのだ。


「えっ……!? 衝撃波みたいなのが出たんだけど……!?」


あまりの破壊力に、章自身が刀を構えたまま固まってしまう。


それを見た残りの護衛たちは一瞬で戦意を喪失し、顔を蒼白にして「ひぃぇぇぇっ!」「化物だぁーっ!」と悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように脱兎の勢いで逃げ出していった。


静まり返った教会の玄関口で、章は手に持つ凶悪すぎる刀を震えながら見つめた。


「し、忍……これ、絶対にやばい代物だろ……!? 一体どこで手に入れたんだ!?」


「……? 拾いました」


忍は小首を傾げ、天使のような無垢な笑顔で首をかしげた。


冷や汗を流す章と、しれっと嘘をつく忍。


無事に(?)舞香を救出した二人の元へ、ボロボロの直哉とスッキリした表情の舞香が歩み寄ってくるのだった。



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