↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/167

70話 紅蓮剣術

「西条、俺だけでやらせてくれ」


直哉が槍を構え直し、鋭い眼光を成彦に向ける。


「……? いいが、無理はするなよ」


「兄さん? 私も助けますよ? 兄さんの護衛が私の本業ですから」


「えっ!? 忍!? お前……!」


俺が驚いて振り返ると、背後に立つ忍の纏う空気が一変していた。


か細く可憐な妹の姿はそこになく、全身から溢れ出る圧倒的な魔力圧に、周囲の空気が重く震える。


「ええ、こう見えてもSランク冒険者ですしね? ……兄さんを侮辱するゴミくらい、掃除しないと気が済みませんから」


「……分かった。」


「頼む……ッ!」


直哉が頷き、俺は忍と二人、背後から迫る武装兵の群れへと向き直った。


「ふむ……君だけかい? まぁいい。全員まとめて倒して、僕に対する多額の賠償金を請求して、そのあと君(忍)を手に入れるのも悪くないしね?」


成彦は薄ら笑いを浮かべ、マジックポーチから鞘に収まった長刀を抜いた。


「……ッ」


「さて、始めようか?」


直哉は獣のような鋭い踏み込みで、一直線に槍を突き出す。風を切る轟音。


しかし、成彦は紙一重でその軌道を見切るように頭を傾け、余裕綽々で回避した。


「うーん、遅いね? じゃあ僕はこれを使おうか」


成彦が刀身を指でなぞると、刃には妖艶な紅蓮の魔力が宿り、メラメラと音を立てて燃え上がった。


「大丈夫、刃は完全に潰してあるから死なないよ? ……生きたまま屈服させてやるからね」


「そうかよッ!」


直哉が咆哮し、槍を乱舞させる。


成彦の懐へ潜り込もうとするが、その動きはまるで舞踏のように優雅で、かつ無駄がない。


ドガッ!!


「ぐあぁっ……!」


槍の穂先が成彦の肩を掠めた瞬間、逆手で握った刀の柄が直哉の腹部に突き刺さり、そのまま空中で鮮やかに体勢を反転させた成彦の踵が、直哉の顔面を捉えた。


「ふむ……遅すぎるよ?」


「ハァ、ハァ……」


地面を転がり、膝をつく直哉。その全身から蒸気が立ち上る。


「身体強化は使っているようだね? ……でも、そんな未熟な力じゃ、王城家の『紅蓮剣術』には一生勝てないよ」


成彦はニヤリと笑い、再び刀身に魔力を流し込んだ。


成彦は燃え盛る刀身へちらりと視線を落とした。


紅蓮の魔力に晒され続けた刃には、すでに細かな亀裂が走り始めている。


「ふむ……あと一分、といったところかな?」


「何がだよ……!」


「この刀だよ。僕の魔力に耐えられるのが、ね」


「おらぁぁぁッ!」


直哉が、渾身の力で槍を繰り出す。


しかし、成彦はそれをも動体視力だけで受け流し、ガキン!という鋭い金属音とともに槍を天へと弾き上げた。


がら空きになった直哉の胸元へ、成彦の容赦のない突き蹴りが放たれる。


ドォォォンッ!!


直哉の身体が教会の分厚い石壁に激しく打ち付けられ、崩れた石材の下へと埋没した。


「ふむ……やっぱりね」


成彦が冷酷な目で、壁際に倒れ伏す直哉を見下ろした。その表情には、勝利を確信した醜悪な悦びが浮かんでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。