66話 一回だけでいいから、会わせろ
「だから! 一回だけでいいから、王城と直接話をさせろって言ってるだろ!」
「ダメだ。当主および成彦様のご指示がない限り、部外者をお通しすることはできません」
王城家の重々しい大門の前で、直哉が門番の男たちに必死に喰ってかかっていた。
「こうなったら……力ずくで押し通る!!」
「待て、やめろ葛西!」
「西条! 止めてくれるな! あいつが泣きそうな顔で手紙書いてたかもしれないと思うと、黙ってられるかよ!」
直哉が槍の柄に手をかけ、強行突破を図ろうとしたその時、邸宅の中から静かで高圧的な声が響いた。
「やめたまえ」
「……?」
門が開き、洗練されたスーツを身に纏った成彦がゆっくりと姿を現した。
その目は見下すような冷たさを孕んでいる。
「君たちは確か、愚妹のクラスメイトだね」
「おう……そうだ! だから王城に会わせろ!」
「今、妹は少し立て込んでいてね。大事な今後の話をしている最中なんだ。……そうだな、1週間後なら会わせてあげるよ?」
「……本当に、王城は無事なんだな?」
「もちろん。家族で今後について話しているだけさ、僕は嘘をつかないよ」
「……わかった。そこまで言うなら1週間待つ」
直哉が強張らせていた肩の力を少し抜いた、その時だった。
「兄さん! 忘れ物です!」
息を切らせた忍が、俺のポーチを持って走り寄ってきた。
「おや……? 忍も来ていたのかい?」
成彦の視線が忍に向けられた瞬間、忍は悲鳴を殺すように小さく身を竦ませ、俺の背後へと隠れた。
「っ……あっ、王城さん……。どうして、ここに……?」
「ハハ、僕の家だからだよ? ……そうだ、せっかくだから君だけでも今から家に寄っていかないかい? 美味しい紅茶でもご馳走するよ」
「い、いや……です! 兄さん、早く帰りましょう……! 」
忍は俺のシャツの裾を強く握り締め、半泣きになりながら縋りついてきた。
「……妹が嫌がってる。今日はこれで失礼する」
「ああ、残念だな。……まあいい、君(忍)は後で貰うとするとしよう」
「……?」
不気味な笑みを残して屋敷へと戻っていく成彦。
俺は彼の最後の言葉に引っかかりを覚えつつも、怯える忍の肩を抱いて王城家を後にした。
(ふふ……『後で貰う』、ですか。随分と役に入り込んでくれていますね? おかげで兄さんも、すっかり貴方を警戒してくれています♪)




