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60話 妹のダンジョン点検

次の日


カーテンの隙間から差し込む朝日に目を覚ます。


ふと隣の部屋を覗くと、忍が静かな寝息を立ててぐっすりと眠っていた。


(忍、まだ寝てるな……。昨日は海に祭りに、一日中遊び回って疲れたんだろう。起こすのは可哀想だし、そっとしておいてやるか)


起こさないよう足音を殺してキッチンへ向かい、手早く朝食を済ませる。


時計を見ると、直哉たちとの約束の時間まであと少しだった。


(よし、そろそろ行くか。葛西たちとの待ち合わせに遅れちゃマズいからな)


鞄を担ぎ、玄関のドアノブに手をかけた——その瞬間。


ガシッ。


「……あれ?」


手首に伝わる、妙に力強い感触。振り返ると、そこにはボサボサの髪のまま、どこか虚ろな瞳で俺の手首を固く掴んでいる忍の姿があった。


「兄さん……? どこに行こうと……?」


「うん? ああ、おはよう忍」


「私を置いて……どこに……?」


「ああ、悪い。忍が気持ちよさそうに寝ていたからさ、起こすのは可哀想だと思って……」


俺が申し訳なさそうに頭を掻くと、忍の手の力がじんわりと抜け、彼女は小さく息を吐いた。


「そうですか……。でも、兄さんの声で目覚めるのは悪くないですよ?……今回みたいに、勝手に出て行かれるのは凄く嫌ですから」


「そ、そうか……ごめんな」


「それで……どちらへ?」


「ああ、葛西たちとダンジョン攻略に行ってくる。今日からいよいよ本ダンジョンだからな」


「……」


俺の言葉を聞いた瞬間、忍の表情から一瞬だけ全ての感情が消えた。


だが、それはほんの一瞬のことで、彼女はすぐにいつもの可憐な笑みを浮かべた。


「……そうですか」


「おう、行ってくるよ!」


「はい! いってらっしゃい、兄さん……」


手を振る忍に見送られ、俺は玄関を飛び出した。


一人取り残された玄関で、忍は兄が立ち去ったドアをじっと見つめながら、静かに呟いた。



(……本ダンジョン、ですか。兄さんを傷つけるような生意気な魔物がいないか……私も一度、裏から『点検』しておいた方がよさそうですね♪)

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