幕間 祠の神様と契約して?
「起きて〜? ねぇ〜」
頬を突っつく柔らかい感触と、呑気な声で目が覚めた。
「うっ……」
重い瞼を開けると、すぐ目の前に見知らぬ少女の顔があった。
「あっ、起きた〜!」
「ッッッ……!? た、誰!? ここどこ!?」
慌てて身を起こし、周囲を見回す。
視界に映ったのは、ゴツゴツとした荒々しい土の壁。
まるで物語に出てくる「ダンジョン」の洞窟内部のような、薄暗く異様な空間だった。
「……? 私だよ〜?」
「ち、近づかないで! 私には全裸の女の子の友達なんて居ないわよ!」
服を一切身につけていない少女に怯え、私は必死に後ずさる。
「あっ……うぅ、まだ服……作れないの〜……」
「は……?」
「あのね! 私と契約して〜?」
「意味が分からないわよ! 契約って何!?」
「私ね〜? 貴方のこと知ってるの〜。いつもお社でお話してくれたよね〜? だから——」
「だから近づかないでって言ってるでしょ!?」
「契約……して?」
怯える私をよそに、少女がすっと指先を伸ばし、私の手首に触れた。
その瞬間——
(……っ!?)
頭の中に、濁流のような記憶の断片が流れ込んできた。
長い間、ほとんど誰も訪れなくなった古い祠で——静かに風を待っていた存在。
そこへバケツを持って現れ、愚痴をこぼしながら掃除をしてくれた「私」の姿。
「貴方……あの祠の……?」
「分かった〜?」
「ええ! ……でも、よりいっそう近づかないで!!」
「ええ〜っ!?」
祠の神様だか精霊だか知らないけれど、正体不明の存在と全裸で地下に閉じ込められている状況は異常すぎる。
「とにかく……ここから出なくっちゃ……!」
「あ、危ないよ〜? 上には変な怪物がいるよ〜?」
「私は貴方と一緒に居るほうが何倍も危険なんです!!」
土埃を払いながら立ち上がり、私はダンジョンの奥へと続く暗い道へと走り出した。




