54話 これが夏休みですか!
「西条! 来たか!」
砂浜に足を踏み入れると、海の中から直哉が豪快に手を振った。
「おう、葛西」
二人で視線を合わせ、口元に不敵な「ニヤリ」という笑みを浮かべる。
「何が始まりますの……?」
その怪しい雰囲気に感づいた舞香が警戒した瞬間——
「おらぁッ!」
「なっ……! ちょっと待ちなさ——」
「よいしょっと!」
「きゃああっ!?」
俺と直哉で舞香の両脇と足を持ち上げ、そのまま海へとダイブさせた。大きな水柱が上がる。
「ぷはっ! ちょっ、海水が……うう、やってくれましたわね! 二人とも!!」
「「逃げろーーー!!」」
怒髪天を突く勢いの舞香から逃げるように、俺と直哉は爆笑しながら波打ち際を走り出した。
「待ちなさい! 絶対に許しませんわ!!」
ひと通り海で暴れ回り、お腹を空かせた俺たちは、海の家のテーブルを囲んで昼飯を食べることにした。
「美味いな、この焼きそば! 運動した後の飯は最高だな!」
「なんですのこれ!? 高級料亭の味とは程遠いですけれど……なんだかクセになりますわね」
ソースの焦げた匂いと紅生姜の香りが食欲をそそる。
直哉も舞香も勢いよく焼きそばを口へ運んでいた。
すると、両隣から急に気配が近づいてきた。
「兄さん! あ〜んです♪」
「後輩く〜ん、私のも食べて〜?」
左からは忍が割り箸で焼きそばを差し出し、右からは復活した(?)陽向先輩がイカ焼きを差し出してくる。
「忍、自分で食べられるから……あと先輩、俺の分もありますから自分で食べてください!」
「うう……分かりました」
「は〜い……残念」
二人同時に落ち込まれ、俺はどこか気まずさを感じつつも、熱々の焼きそばを口に放り込んだ。




