52話 保健室の先輩、海に現る
波打ち際に向かった忍は、不満げな表情を隠そうともせずに直哉たちへ言い放った。
「葛西さん、兄さんの命令ですから遊んであげますね?」
「おう! 歓迎するぜ!」
直哉がニカッと笑った次の瞬間——バシャンッ!
「ッッッ……!?」
「油断大敵ですわ〜!」
背後から忍へ容赦なく海水を浴びせたのは、金色のビキニに身を包んだ舞香だった。
水滴でシャツと髪を濡らされた忍は、青筋を浮かべながら冷ややかな微笑みを浮かべる。
「……お姉さん、覚悟してくださいね?」
「わわっ!? に、逃げるのですわ〜っ!」
「待ってくださいよ……?」
逃げ惑う舞香を、笑顔の忍が容赦なく追いかけ回し始める。
「……ハハ、何やってんだよ、あいつら……」
パラソルの下で荷物番をしながら、俺は楽しそうに暴れ回る三人を見て苦笑した。
すると背後から、柔らかく甘い声が耳元に届いた。
「後輩く〜ん」
「……? 先輩!?」
振り返ると、そこには白衣を羽織った陽向先輩が立っていた。
薄黄色のチェック柄ビキニに包まれた豊満な身体と、上着の隙間から覗く眩しい胸元。
胸元にはなぜか「保健室 飛鳥陽向」と書かれた名札がしっかり差し込まれている。
「どうしてここにいるんですか……!?」
「? なんでだろ〜ね〜?」
「……?」
「どうかな〜?」
どこか虚ろな、それでいて熱を帯んだ瞳で首をかしげる陽向先輩。
「……す、すごく似合っています、先輩」
「ありがとう〜!」
俺が気恥ずかしさを隠しながら素直に褒めると、陽向先輩はパァッと顔を輝かせ、そのまま俺の頭を抱きかかえるようにギュッと胸元へ引き寄せた。
「っ!? ちょっ、先輩!? 抱きつくのはダメですって……っ!」
「えへへ〜、美味しいな〜♪」
「……??(美味しい……??)」
柔らかい感触と甘い香りに包まれながら、俺は陽向先輩の謎すぎる発言に頭を悩ませるのだった。




