51話 兄さんのシャツ、借りました♡
「兄さん! どうですか? 私の水着姿!」
海の家から砂浜へ戻る途中、忍が俺の少し前をくるりと一回転してみせた。
ピンク髪に、白地に黒いフリルをあしらったビキニ。
そしてその上には、どこか見覚えのあるダボッとしたカッターシャツを羽織っている。
「……? 買いに行った時に『似合ってる』って言っただろ?」
「何度でも言ってもらいたいものですよ? 兄さんからの褒め言葉なら、何百回でも聞き足りません!」
「はいはい……本当に似合ってるよ、忍」
「はいっ!」
満面の笑みで胸を張る忍。だが、俺は彼女が羽織っているシャツの袖口を見て、ふと首をかしげた。
「あれ? お前、そのシャツ……」
「はい! 兄さんの学校の制服のカッターシャツですよ?」
「……? (なんで俺のシャツ着てんだ……?)まあ、日焼け止めならいいか」
「ふふ、ありがとうございます! これを着ていると、まるで兄さんの温もりに全身を包まれているようで……すごく幸せです!」
「そ、そうか……」
妙に重い妹の愛着に若干圧倒されていると、波打ち際から直哉と舞香の声が響いた。
「おーい! 忍ちゃん! こっちで一緒に遊ばないか〜!?」
「いえ、私は兄さんと一緒に——」
「忍、せっかくだし行って来たらどうだ? 俺がここで荷物番しとくからさ」
「っ……! あっ、うう……」
せっかくの二人きりの時間を邪魔され、忍はあからさまに嫌そうな顔をして引き留めようとしてくる。
だが、俺は彼女の背中をポンと軽く叩いた。
「たまには友達と羽を伸ばして遊んでこいって」
「……はい! 行ってきますね! 帰ってきたら、しっかり濡れた私を見てくださいね? 服が濡れて肌にしっとり貼りついた方が、兄さんももっと私を見てくれるかもしれませんし♪」
さらっと怪しい発言を残しつつ、忍は制服のシャツの裾を翻して、波打ち際で待つ直哉たちの元へと走っていった。




