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5話 罠にかかる人はちょっと……

「葛西、俺は先に教室へ戻るぞ」と告げ、俺は一人で教室へと戻った。


ドアを開けると、教壇で煙草をふかしていた教官が気怠げに視線を向けてきた。


「速かったな。もう一人はどうした?」


「……怪我しまして」


「そうか。初心者が調子に乗って油断したか?」


「いえ、竹槍に毒が塗ってある罠を踏みました」


「……? 本当か、今の話」


教官の目から一瞬でだるさが消え、鋭い眼光が俺を射抜いた。いつもの適当な雰囲気とは違う、本物の冒険者の顔だ。


「はい」


「……そうか。お前たち、もう今日はダンジョンに行くなよ? 少し上と話してくるからな」


教官は煙草を灰皿に押し付けると、急ぎ足で教室を出て行った。


(やっぱり、ただの事故じゃない……)


胸の中のザワつきを拭えぬまま時間が過ぎ、放課後になった。


俺は直哉の様子を見に、再び保健室へと向かった。


ドアを開けると、ベッドの上で上半身を起こした直哉が、ベッド脇に立つ陽向先輩に声をかけているところだった。


「陽向先輩って、彼氏いないんですか?」


「はい〜、いませんよ〜?」


陽向先輩はニコニコと首をかしげながら答える。直哉は「もらった!」と言わんばかりのドヤ顔で身を乗り出した。


「なら、俺とかどうですか!?」


「う〜ん……直哉くんのこと、好きですよ〜? でも、罠にかかっちゃう人はちょっと……かな?」


「ガーーーーン……ッ!?」


綺麗に振られて真っ白に燃え尽きている直哉を見て、俺は部屋に入りながら声をかけた。


「元気そうだな、葛西」


「おう、西条……俺、今あっけなく振られたわ……」


「そうか」


「えへへ、ごめんなさ〜い」


陽向先輩は申し訳なさそうに、てへっと頭を下げた。そんな先輩の姿を見て、俺は素直な感想を口にする。


「まあ、美人な先輩だしな。振られるのも仕方ないだろ」


「ふぇっ!? あ、あわわわわ……ッ!?」


俺の何気ない言葉に、陽向先輩は一瞬で顔を真っ赤にし、両手で頬を押さえてパニックになり始めた。


完全に想定外の褒め言葉だったらしい。


それを見た直哉が、真っ白な状態から一転して俺の肩を激しく揺さぶってきた。


「もしかして! 攻めたら、俺にもワンチャンあったのかよ!!?」


「何言ってんだ、葛西」


俺は半目になりながら、騒がしい直哉の手をウザそうに払い落とした。



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