4話 初心者ダンジョンにあるはずのない罠
「なんだ、楽勝じゃんスライム!」
直哉が槍を突き出し、緑色のぷよぷよした塊を突く。スライムはあっけなく弾け飛び、魔石を残して消滅した。
「気をつけろ。顔に張り付かれたら窒息するぞ」
「マジかよ! それは怖いな……。でもまあ、俺たちでも結構やれそうじゃん!」
「そうだな」
初心者ダンジョンの浅層は、拍子抜けするほど穏やかだった。俺たちは順調に魔石を拾いながら奥へと進む。
「……あっ? ぐっ……!?」
「どうした、葛西!?」
突然、直哉が悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。慌てて駆け寄ると、直哉は右足を抱えて顔を歪ませている。
「な、何か……踏んで……っ」
床の落ち葉を払うと、血に濡れた尖った竹の杭が露出していた。しかも、傷口の周りが赤黒く変色し始めている。
「くそっ、足が……痛え……っ!」
「毒か……! ちっ、一旦引き返すぞ。背負うから捕まれ!」
俺は直哉を背中に担ぎ上げると、体力の温存を考えない速度でダンジョンを駆け抜け、学園の保健室へと飛び込んだ。
「解毒剤、低ランクのでいいわ! それとポーションもお願いね、陽向!」
「はい〜、先生!」
保健室に飛び込むと、保険医の女性が素早く状況を把握し、テキパキと指示を出した。
返事をして棚から薬を取り出したのは、助手をしている様子の『陽向』という少女だ。
「ふぅ……これで良し、と」
「ありがとう、陽向」
「いえいえ〜!」
陽向が手際よく傷口にポーションをかけ、解毒剤を飲ませると、直哉の青ざめていた顔色に赤みが戻っていく。
「あれ……? 痛みが引いていく……! ありがとうございます、先生、陽向さん!」
「はぁ……あなたたち、新入生でしょ? 一体どこのダンジョンに潜っていたの?」
保険医の先生が、呆れたようにため息をつきながら尋ねてきた。
「初心者ダンジョンです。そこで、竹槍の罠にかかっちゃって……」
「……?」
先生は眉をひそめ、不審そうに首をかしげた。
「初心者ダンジョンに、そんな罠は設置されていないはずよ? しかも……低ランクとはいえ、明確な悪意を持って『毒』が塗られた仕掛けなんて」
「え……?」
直哉と顔を見合わせる。
「……とにかく、今日はもう安静にしておきなさい。いいわね?」
「はい……ありがとうございました」




