47/165
47話 海、行きましょう!!
「兄さん! 夏休みですね!」
家に着くなり、忍が目をキラキラと輝かせながら俺の前に躍り出てきた。
「そうだな。やっとひと息ついた感じだな」
「海行きましょう!!」
「……?」
唐突すぎる提案に、俺は一瞬フリーズした。
「すまん忍、俺はダンジョンに潜って強くなる使命が——」
「行きませんか……?」
語尾を少し低くし、忍は上目遣いでじっと俺を見つめてくる。
その瞳の奥に一瞬だけ揺らめいた暗い威圧感に、背筋がヒヤリと冷えた。
「……だめだ。今は一刻も早く実力をつけないと」
「兄さん……お願いです。息抜きは絶対に必要ですよ? もしまた……前みたいなことになったら、私……」
そこまで言って、忍は胸元をギュッと握り締め、今にも泣き出しそうな顔で声を震わせた。
死にかけたあのBランクダンジョンでの惨劇。
「……分かった。海、行こう」
「はいっ! ふふ、では早速水着を買いに行きましょうか? 去年の水着、ちょっと『きつく』なっちゃったので!」
一瞬で涙が引っ込み、パァッと満面の笑みを咲かせる忍。
(……しまった、嵌められた)




