46話 誰一人欠けることなく
「お前たち、誰一人欠けることなく無事に一学期を終えられたな。これから夏休みに入るが……二学期に顔を見せないなんて真似だけは絶対にやめろよ?」
壇上に立つ教官が、黒板にドカッと肘をつきながらクラス全体を鋭い眼光で見回した。
「はーい、先生ー!」
「たく……元気だけはいいな。これから夏休み中の注意点を伝える。初心者ダンジョンをクリアした者は、この休みの間に『本ダンジョン』へと向かうことになるだろう。だが、いいか? 攻略を許すのは10層までだ。それ以上は絶対に足を踏み入れるな。わかったか?」
「はーい!」
教官の厳格な警告に、生徒たちの元気な返事が教室に響き渡る。
「よし、それじゃあ解散! 事故を起こさずに過ごせよ!」
号令とともに一斉に騒がしくなる教室。机の上の荷物をまとめながら、隣の席の直哉が身を乗り出してきた。
「西条、どうする? 夏休みの予定」
「そうだな……。葛西、お前暇か?」
「おう! 筋トレかダンジョン潜りならいつでも付き合えるぜ!」
「そうか、ならまた日程が決まったら連絡する」
「おう! 舞香には俺から連絡入れておくから任せとけ、西条!」
「助かる、よろしく頼む」
直哉と拳を軽く突き合わせ、俺は鞄を担いで教室を後にした。
校門を出ると、夏の眩しい日差しと蝉の鳴き声が全身を包み込む。先日のBランクダンジョンでの死闘、そして小太刀すら簡単に折れてしまった己の圧倒的な力不足が、頭の中で悔しさと共に渦巻いていた。
(明日から夏休みか……。次にあのレベルの化け物と遭遇した時、忍も葛西も王城も、今度こそ俺の手で守り切れるように……少しでも強くなるために鍛え上げないと)
青空を見上げながら拳を強く握り締め、俺は静かに闘志を燃やした。




