43話 もう少し、生かしておいてあげますね?
「兄さん! お待たせしました!」
下駄箱の前で待っていた俺の元へ、忍がパァッと花が咲くような笑顔で駆け寄ってきた。
「おう、おかえり忍」
「ふふ、お待たせしてすみません。さあ、一緒に帰りましょう!」
並んで歩き出し、夕暮れ時の静かな街並みを歩く。
ふと思い出した疑問を、俺は忍に投げかけた。
「そうだ、忍。王城って男の件……どうなったんだ?」
「……? ああ、はい! あの後、しっかりとお断りさせていただきました!」
忍は困ったように眉を下げ、心細そうに俺の服の袖をキュッと握りしめた。
「でもですね……兄さん。あの人、まだしつこく迫ってくるのです。『拒否権はない』なんて言われて……私、本当はすごく怖いんです……っ」
「そうか……。大丈夫だ、俺が絶対に守ってやるからな」
「はい……! 兄さん!」
(……ふふ、可哀想な王城さん。兄さんに『守る』ってまた言われたよ〜もう少し王城さん生かしておいてあげますね?)
忍は袖にしがみつきながら、俺に隠れて暗い微笑を浮かべた。
**【帰宅】**
家に到着し、鍵を開けて中に入る。
「ふぅ……今日は色々あって本当に疲れたな」
「兄さん、こっちに来てください!」
「? どうした?」
リビングへ向かうと、忍がソファをぽんぽんと叩いて俺を促した。言われるがままに腰を下ろすと、忍は待ってましたとばかりに隣へ滑り込んできた。
「えへへ……兄さん!」
「忍……?」
忍は俺の太ももに頭を預け、膝枕の体勢でぎゅっと俺の腰に抱きついてきた。
「……スースー……」
「……って、もう寝たのかよ」
拍子抜けして苦笑いが漏れる。緊張の糸が切れたのか、忍は安心しきった顔で規則正しい寝息を立て始めていた。
「まあ……今日もお疲れ様だな」
俺は忍を起こさないよう静かに息を吐き、彼女の柔らかい髪に触れて優しく頭を撫でてやった。




