36話 絶望のデーモン
重々しい扉を開くと、その中央に禍々しい威容を誇るモンスター——デーモンが佇んでいた。
背中の黒い翼、漆黒の皮膚、そして見下ろすような凶虐な瞳。
デーモンの周囲には、数体の小悪魔が蠢いている。
「西条……本当にいるんだな、悪魔ってやつは」
「そうだな……」
俺たちは息を呑んだ。
これまで戦ってきたモンスターとは、放つ威圧感の桁が違いすぎる。
「ハハ……俺たち、ここで死ぬかもな」
「……冗談はよせ、葛西」
「悪い……ちっと弱気になっちまった。行くぞッ!」
直哉が欠けた槍を握り直し、果敢に突きをくり出す。
——だが、相手が悪すぎた。
デーモンは最小限の動きで槍の鋭い一撃を軽々と回避すると、槍の柄をガシッと力任せに掴んだ。
「なっ!?」
「グアッ!」
そのまま強烈な力で引き寄せられ、逃れる間もなく直哉の鳩尾に重厚な拳が叩き込まれた。
「ぐはッ……!?」
生々しい打撃音とともに直哉の巨体が宙を舞い、地面を激しく転がっていく。
「直哉っ!……くそッ!」
すかさず俺は太刀を握り締め、デーモンの隙を狙って肉薄した。死力を尽くして首元へ斬りかかる!
……ガチィンッ!!
太刀はデーモンの硬質な皮膚にわずかに食い込んだものの、そこでピタリと止まり、骨までは届かない。
「グアァッ!」
直後、デーモンの巨大な足が俺の胴体を捉えた。
容赦のない蹴り飛ばしを受け、俺は砲弾のような勢いで遠くの壁へと激突した。
壁へ激突した衝撃で太刀が手から弾け飛び、床を滑って遠ざかっていく。
「ガハッ……!? ぐっ……」
「西条さん! 葛西さん……ッ!!」
二人同時に叩き伏せられた光景を見て、舞香の目から涙が溢れ出た。
しかし、彼女はその恐怖を怒りで塗りつぶすように叫んだ。
「……許しませんわ!!」
舞香の手から、極限状態で練り上げられた大威力の無詠唱魔法が放たれる。
真紅の熱線が一直線に走り、デーモンの胸元を鋭く穿った。
ドカァァァンッ!!
「グオォォォォッ!?」
耳を裂くような悲鳴を上げ、デーモンが激しくたじろぐ。
「や……やりましたわ!!」
己の魔法の手応えに、舞香はパッと表情を輝かせた。
その刹那、彼女の後ろで何かが動いた
背後に忍び寄っていた小悪魔が、手に持った棍棒を振り上げる。
ごすっ!!
「きゃあぁぁっ!?」
頭を容赦なくしばかれ、舞香は短い悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。




