34話 お嬢様の情報網
翌日の学園。忍のクラスへ押し寄せた王城は、昨日の続きとばかりに彼女を追い詰めていた。
「忍。返事は?」
廊下の隅、王城は壁に手をつき、忍を退路のない場所に閉じ込める。忍は眉一つ動かさず、静かに告げた。
「……すみません。お付き合いできません」
「……拒否権はないよと言ったはずだ」
王城の瞳に、爛々とした悪意が宿る。
「何をするつもりですか?」
「そんなに恐れることはないさ。君のお兄さんには、ほんの少し……『痛い目』を見てもらうだけだよ。君が素直になるまでね」
王城は口角を歪め、忍の反応を愉しむように立ち去った。
「?」
一方、その日の放課後。
初心者ダンジョンを無事にクリアし、勢いに乗る俺たちは、次の目的地を決めるために端末を囲んでいた。
「…… ここにしましょう!」
「えっ、舞香……そこって……?」
直哉が画面を覗き込み、目を丸くする。
「へぇ、すげーな! 」
「ええ、そうですわ! 私の家の情報網から仕入れたの。ここなら私たちでも攻略できますわよ!」
舞香は胸を張って断言した。王城家という名門のコネクションを使った、ダンジョンデータらしい。
「すげーな王城グループ……そんなとこの情報まで掴んでんのかよ」
「ええ、先行の情報ですわ! 舞香にお任せあれ!」
俺は端末の画面を凝視した。そのダンジョンは、確かに攻略実績も少ない、Dランクダンジョンだが、なぜか胸騒ぎがする。
「……なあ、ここにしようぜ西条。舞香がこれだけ調べてくれたんだし、行ってみないか?」
「そうしましょう! ねっ? 王城家の調査では、現在確認されている魔物はDランクまでですの。どうかしら?」
舞香が期待に満ちた目でこちらを覗き込んでくる。
「おっ……おう。まあ……」
王城家の情報が正しいなら、俺たちでも攻略可能な範囲だ。
「だが、少しでもおかしかったら即撤退する。それが条件だ」
「はいですわ!」
「おう」
王城家の情報が正しいなら、挑戦する価値はある。
俺は一抹の不安を抱えながらも、二人に頷いた。




