29話 宝箱から出てきたのは
「やったわ! 見たでしょ、今の私の完璧なフィニッシュ!」
両手を突き出し、ドヤ顔で胸を張る舞香。
だが、10分間の死闘の末にトドメを横取りされた直哉と、呆れ果てた俺の反応はひどく薄かった。
「おっ……おう……」
「そうだな……すごかったぞ」
「なによそれ! なんで誰も喜んでくれませんの!? ふんっ! ……あら? 宝箱ですわ!」
俺たちの素っ気ない態度にプンプン怒っていた舞香だったが、ボスの消滅した跡地にぽつんと置かれた宝箱を見つけると、一瞬で機嫌を直してトテトテと走り寄っていった。
「……あいつ、本当にどこかの大企業のお嬢様なのか? 西条」
「知らん。俺に聞くな」
あんなにポンコツで素手喧嘩が好きなお嬢様がいてたまるか、と直哉と呆れ顔を見合わせる。
パカッ。
「……? 紙……?」
宝箱を開けた舞香が、首をかしげながら一枚の古びた紙切れを取り出した。
「どうした? 何かすごいお宝でもあったのか、王城?」
「ううん……これしかなかったわ?」
駆け寄った直哉と俺に、舞香がその紙を見せてくる。羊皮紙のような質感の紙には、解読不能な不気味な紋様と文字が記されていた。
「何の紙だこれ……西条、お前こういうのわかるか?」
「どれ……あれ?」
その紙に記された紋様を見た瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。
(……あれ? この紙……この紋様の感じ、どこかで……)
どこかで見た記憶がある。そうだ、自宅の俺の部屋——いや、忍の部屋の机の引き出しに、これとそっくりな奇妙な紙が何枚もしまってあったはずだ。
「……西条?」
「……いや、なんでもない」
(……いや、今は確証がない。似ているだけで忍と関係があると決めつけるのは早いか)
「まあいいや、正解の分からない紙切れ一枚だけど、とりあえず無事にボスも倒したし帰るか!」
「そうだな! ……あ、そうだ、王城。これ着ろ!」
直哉はそう言うと、自分が着ていた上着をバッと脱いで舞香に投げつけた。
「えっ……? なんですの急に……」
「お前……その、服が破けてるから……その……っ!」
さっきボスに胸を貫かれた際、舞香の制服の胸元からお腹にかけてが派手に破れ、破れ目から豊かな胸と白い肌が露わになっていたのだ。
直哉は顔を真っ赤にして明後日の方向を向いている。
舞香は自分の服の状態にようやく気づくと、一瞬で顔を茹でダコのように真っ赤にした。
「っ~~~~~!? 葛西さん!! こっち見ないでくださいます!? このデリカシーゼロ男ーーーッ!!」
「見ねぇよ! 着ろって渡してんだろ! って、おい! やめろ! 魔法を向けるな! 爆破するなぁぁぁッ!?」
「だまりなさいませーーーッ!!」
ドカン! バカン!とボス部屋に舞香の魔法の爆音が響き渡り、直哉が悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「……葛西、大変だな」
俺は二人の騒ぎから一歩引き、巻き込まれないように距離を置きながら、そっとため息をついた。
ポケットの中の手に触れる、謎の紙切れの感触。
ボス部屋の宝箱にあった紙と、忍の部屋にある紙。
……なぜ、ダンジョンのボスがそんなものを持っていたのか。
胸の中に芽生えた小さな違和感を拭えないまま、俺は二人を追いかけてダンジョンの出口へと向かった。




