28話 俺のトドメが……
「あった……! 葛西、避けろ!」
俺はポケットから取り出した丸い物体を、直哉とボスが交戦している渦中へ向けて投げつけた。
「あっ!?」
直哉が咄嗟に身を引く。その直後、見えないボスの胴体付近に球体が命中し、激しい音を立てて破裂した。
ベチャッ!!
「グモーッ!?」
姿を消していたボスの巨体に、鮮やかな蛍光ピンクの絵の具がぶちまけられ、そのシルエットがくっきりと浮かび上がった。
「……防犯用のペイントボール!? 西条、お前そんなものまで持ってんのか!?」
「備えは大事だからな。これで見やすくなっただろ!」
「おう! 視認できりゃこっちのもんだ、任せろッ!」
巨体を剥き出しにして焦るオークに対し、直哉が槍を構えて躍り出る。
「やあぁぁぁッ!!」
**【10分後】**
「はぁ、はぁ……これで……終わりだぁッ!」
「ブモーッ!?」
激しい攻防の末、ペイントで染まったオークの巨体は限界を迎えていた。直哉が一身に攻撃を受け止め、死力を尽くした一撃がいま繰り出される。
スパァンッ!!
ボスの巨体が崩れ落ちようとした——その、まさにトドメの瞬間。
ドガァァァァンッ!!!
「あらぁぁぁぁッ!! よくもさっきはやってくれましたわねぇぇッ!!」
上空から降り注いだ圧倒的な威力の広範囲無詠唱魔法が、瀕死のボスを跡形もなく吹き飛ばした。轟音とともに土煙が舞い上がり、オークは粉々になって消失する。
「……あれ?」
「えっ……!?」
渾身のトドメを横から完璧に奪われた直哉は、槍を振り抜いた姿勢のまま呆然と固まった。
「やりましたわーッ! 王城家の威信をかけた大勝利ですわ!」
そこには、傷を癒やして完全復活した舞香が、ハァハァと息を荒らげながら誇らしげに胸を張る姿があった。恐怖を死に物狂いの怒りで上書きし、全魔力を叩き込んだらしい。
10分間、体を張ってボスの攻撃を耐え抜き、動きを止め、動けないくらいまでに消耗させた直哉は、ガックリと膝をついた。
「俺の……俺の10分間の努力とトドメが……」
「どんまい、葛西」
俺はそっと直哉の肩を叩き、哀愁漂う背中に深く同情したのだった。




