26話 生きて帰るのが最優先
「ふぅ……ここが4階層のボス部屋の前だな」
重々しい意匠が施された巨大な石扉を見上げ、俺は一度足を止めた。
扉の隙間からは、今までとは桁違いの不穏な魔力が漏れ出している。
「本当に……こんな場所にボス部屋が存在しますのね……」
「へぇ、すげーな! 映画に出てくるダンジョンそのまんまじゃん!」
感心したように声を上げる舞香と直哉。
だが、二人とも先ほどの連続戦闘で魔力を消耗し、息が上がっている。
「よし、確認できたし戻るか?」
「えっ、せっかくだし……少しだけ中を覗いてみませんこと?」
「ダメだ。俺たちの魔力も体力も万全じゃない。教官の言った通り『生きて帰る』のが最優先だ」
「そうだな。西条の言う通りだ、今日は引き返そうぜ」
直哉も同意し、俺たちは踵を返そうとした——その時。
ギィィィィ……ッ!
重厚な石音とともに、背後で巨大な扉が勝手に開いていった。
「あら? ごめんなさい、興味本位で少し触ったら開いてしまいましたわ……!?」
「お前ぇぇッ! なに余計なことしてんだよ!?」
直哉の悲鳴と俺のツッコミが重なった瞬間、扉の奥から溢れ出してきたのはまばゆい奔流のような光だった。
「っ……!? 引っ張られる……!?」
抵抗する間もなく、俺たち3人の身体は光の渦へと呑み込まれていく。
衝撃と共に視界が激しく揺れ、次に目を開けた時には、俺たちは広大なドーム状の部屋の中央に倒れ込んでいた。
背後の扉は固く閉ざされ、逃げ場は完全に遮断されている。
「ここは……っ! ボス部屋の内部か!?」
「そんな……勝手に転送されて閉じ込められるなんて聞いてませんわよ!?」
部屋の奥から、地響きのような重低音が轟き、逃げ道のない完全な閉鎖空間。
俺は即座に腰の刀に手を掛け、二人の前に一歩踏み出した。
「……文句を言ってる場合じゃない! こうなったら腹を括ってやるぞ!」




