25話 やはりお嬢様はポンコツ
「西条、お前……ッ!」
HRが終わるや否や、直哉がガバッと俺の肩を掴み、感極まった顔で迫ってきた。
「なんだよ……?」
「俺たちのことを思って、あんな熱いこと言ってくれたんだな……! 無事に生きて帰ろうって!」
「……違うからな。俺はただ教官の質問に事実を答えただけだ」
冷たくあしらう俺に、今度は舞香が胸を張ってドヤ顔で割り込んできた。
「西条さん、私だって守られるだけの存在じゃありませんわよ? あなたの教訓、しかと胸に刻みましたわ!」
「だから何勘違いしてんだよ……」
熱血モードの二人を宥めつつ、俺たちは予定通り初心者用ダンジョンへと向かった。
【初心者用ダンジョン 4階層】
じめっとした岩肌の洞窟を進む。ここ4階層からは、剣や槍を持ったアンデッドモンスター『スケルトン』が出現するエリアだ。
「スケルトンが出てくるらしい。気を引き締めて——」
「私に任せなさい!!」
制止も聞かず、舞香は「ふんす!」と気合の声を上げて単身飛び出していった。
……そして、わずか数秒後。
「ちょっと! たんま! たんまですわーッ!?」
洞窟の奥から響く情けない悲鳴。慌てて駆けつけると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「ぐぬぬぬぬ……ッ! 負けませんわよ……ッ! 王城家の誇りにかけて……ッ!」
なんと舞香は武器をかなぐり捨て、スケルトンとガチガチの腕力勝負を繰り広げていた。
カタカタと顎を鳴らす骨の腕と、華奢な手ががっちり噛み合い互角に拮抗している。
「……どうして素手同士なんだよ!! 魔法はどうした魔法は!!」
「魔力纏え! 魔力!」
俺の叫び声に、舞香の目がハッと見開かれた。
「それですわーッ!」
体内の魔力を拳に集中させた瞬間、バチバチと青白いオーラが舞香の全身を包み込む。
そのまま一気に力を込めると、拮抗していたスケルトンの両腕がメキメキと音を立てて木っ端微塵に砕け散った。
「ぬあああぁぁッ!」
バランスを崩したスケルトンを押し倒し、舞香はそのまま馬乗りになった。
ドカッ! バキッ! ゴカッ!
「覚悟なさい! この! このっ! このーッ!」
「……えげつないな、あいつ」
「……本当だな」
無詠唱魔法の使い手とは思えない、荒々しすぎるマウントパンチの連打。
顔面を滅多打ちにされたスケルトンは、数秒もしないうちに骨の欠片すら残さず、サラサラとした灰となって消え去った。
「ふぅ……! やりましたわ! どうですの! 私の華麗なる戦いは!」
乱れた髪を払い、ドヤ顔で振り返る舞香に、俺と直哉は引きつった顔で声を揃えた。
「あ……うん。とりあえず前衛は俺たちに任せろな?」
「そうだぜ王城……お前は後ろで魔法撃っててくれ……マジで」
「あら? そうでしたわ! 私、魔術師ですものね!」
すっかり自分の役職を忘れていた舞香は、ポンと手を叩いて可愛らしく首をかしげた。
「ほら、感心してないで早く行くぞ」
「はい! 今度こそ私の凄まじい魔法をお見せしますわ!」
「おう、期待してるぜ」
呆れつつもクスッと笑い合いながら、俺たちは再びダンジョンの奥へと足を進めた。




