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18話 生きて帰るために

昼休み。

中庭のベンチに腰掛け、俺は教官から突きつけられた課題についてぼんやりと考えを巡らせていた。


「兄さん? どうしたのですか?」


パンの袋を手にした忍が、不思議そうに顔を覗き込んできた。薄桃色の髪が風に揺れ、心配そうに眉をひそめている。


「いや……少しな」


「……? 私にも教えてください」


忍は俺の隣にちょこんと腰掛けると、覗き込むように視線を合わせてきた。


隠すようなことでもないので、俺は教官からの問いをそのまま口に出してみた。


「冒険者に一番大事なものって、なんだと思う?」


「……? さて? 普通に考えたら『強さ』ですかね?」


「そうだよな。普通はそう思うよな」


他の生徒たちと同じ回答に、俺はやっぱりそうか、と溜息を漏らした。


だが、忍は首を軽く振ると、愛おしそうに俺の袖をギュッと握りしめてきた。


「もう……でもですね? どんなに、どんなに強くても——無事に帰ってきてくれないと、意味がありませんよ?」


「……!」


忍の言葉に、胸の奥がハッと跳ねた。


帰ってくること。生きて戻ること。


強さも、良い装備も、全ては「生きて帰る」ための手段でしかない。教官が言いたかった答えの核心に、一瞬で手が届いた気がした。


「……そうだな。その通りだ」


「はい! なので……危険なことはせず、私と一緒にいつまでも暮らしましょうね? 兄さん」


ふふ、と花が咲くように微笑む忍。



「……そうだな。考えておく」


「はい!」


忍は満足そうに頷くと、俺の肩にぽんと頭を預けてきた。


(生きて帰る……か)


俺は忍の頭を撫でながら、自分の心に刻みつける。あいつらに復讐を果たすためにも、俺は死ぬわけにはいかない。どんな手を使ってでも、生きて戻らなければならないのだと。



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