↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/166

141話 明かされた真実

男は鬱陶しそうに頭を掻きむしり、忌々しげに舌打ちを鳴らした。


「……」


プロとしての冷徹な覚悟を瞳に宿し、男がナイフを構え直す。


その殺気を正面から浴びながら、俺を抱きかかえたままの陽向先輩が、ふにゃりと間の抜けた声を上げた。


「後輩く〜ん、これ、はいっ!」


「……え?」


言われた瞬間、先輩の掌が俺の胸板へとぺたりと押し当てられた。


直後、ドクンと心臓が跳ね上がり、身体の芯へ奔流のような熱が流れ込んできた。


熱いのに心地よく、全身の血管が膨れ上がるような圧倒的なエネルギー。


「な、なんだこれ……!? 先輩、何を……」


「魔力だよ〜?」


「えっ?」


「忍ちゃんからね、もし危なくなったら後輩くんに渡してね〜って言われてたの〜」


「あ、ありがとうございます……? って、忍が!?」


全身にみなぎる力に困惑している俺を見て、男が首をコキリと鳴らし、あきれ果てたように深くため息を吐いた。


今度は翻訳を通す必要すらない、流暢で冷淡な日本語だった。


「あーあー……おい、西条章」


「……!」


「お前……まさか二体も神と契約してたのか?」


「神……? 何を言ってるんだ、あんた」


唐突な単語に眉を寄せる俺を、男は哀れむような、信じられないものを見るような目で見つめた。


「お前、何も知らないのか? ……そこにいるそいつと、お前の大好きな妹。どっちも正真正銘の『神』だぞ」


「……は?」


頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。


忍が……神? 陽向先輩も?


いつも隣で笑って、お弁当を作ってくれて、わがままを言ってくるあの妹が……?


思わず、先輩の顔を見る。


「えっ……先輩、本当ですか? 今あいつが言ったこと……」


「うん! ……あっ! でも言っちゃダメだったんだ! 忍ちゃんに怒られちゃうよ〜〜!」


頭を抱えてじたばたと身悶えする先輩。


肯定だった。


言い逃れようのない、無邪気な肯定。


その姿を見て、男は鼻で嘲笑った。


「傑作だな。お前、これまで何も知らずに『家族ごっこ』を演じてたのか?」


「俺は……っ」



今まで信じて疑わなかった日常、妹との時間、先輩との他愛ない会話。


その全てが足元から音を立てて崩れ落ちていくような強烈な眩暈。


立ち尽くす俺の隙を、殺し屋が見逃すはずもなかった。


「……困惑してるのか? なら、死ね」


一瞬で距離をゼロに詰めた男の切っ先が、俺の眼球目掛けて一直線に突き出される。


反応できない——そう覚悟した瞬間。


ガキィィィンッッ!!


澄んだ衝撃音が響き、火花が散った。


俺の目の前には、いつの間にか身を乗り出した陽向先輩の小さな手が突き出されており、その素肌が男の鋭利な刃を平然と受け止めて弾き返していた。


「もうっ! 危ないな〜! ……後輩くん? お話はあいつを先に倒してから! それからだよ〜?」


ぷくっと頬を膨らませて振り返る先輩。


その言葉に、胸の中に渦巻いていた混乱と恐怖が、カチリと音を立てて別の感情へと切り替わった。


真実がどうあれ、忍が何者であれ——今、目の前の敵を排除しなければ、明日を確かめることすらできない。


「……そうですね。全部、後でたっぷり聞かせてもらいますよ! 陽向先輩!」


「うんっ! いっくよ〜〜!」


先輩から流し込まれた莫大な魔力が、俺の全身を包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。