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幕間 屋上の殺し屋と神

放課後の薄暗い校舎


錆びついた非常階段を上った先の屋上で、冷たい春風が吹き抜けていた。


フェンスに背を預け、火のついた煙草を燻らせる男の元へ、音もなく白い影が寄り添う。


"So, Lexia. How was the target?"


(「レクシア、どうだった? 標的は」)


男の低い問いかけに、プラチナブロンドの髪を揺らした少女——アリエッタを騙る神霊レクシアは、うっとりと頬を緩めた。


"Yes... he was truly a wonderful individual."


(「ええ。とても素晴らしい方でしたよ?」)


"Is that so."


(「そうかよ」)


紫煙をひとつ吐き出した男を見上げ、レクシアは小首を傾げる。


"And you? Are your preparations in order?"


(「そちらの仕掛けは終わったのですか?」)


"Yeah. Told them it was orders from the higher-ups, and they played along easily enough. A few of them pushed back, but none of them are around anymore. Seems they were teachers here, supposedly."


(「ああ。上からの命令だと言ったら素直に協力してくれたよ。反発してくる連中も何人かいたが……もういねぇよ。一応、ここの教師だったらしいがな」)


"I see."


(「そうですか」)


血の滲むような報告にも、レクシアは眉一つ動かさずに微笑むだけだった。


男は吸い殻を靴底で踏み消し、鋭い眼光を校舎の窓へと向ける。


"More importantly, Lexia... think you can keep that little sister of his in check?"


(「それよりレクシア。妹の方は、止められそうか?」)


"Hehe, but of course. Yet how unlike you to sound so meek, my dear contractor. To harbor doubt when you have a God by your side... truly lamentable."


(「ふふ、当たり前ですよ? ですが貴方にしては随分と弱気ですね? 私がついているというのに……嘆かわしいことです」)


"It's not that. Just got a bad taste in my mouth, is all."


(「いや、気が引けてな」)


"Over slaughtering young souls with bright futures ahead of them?"


(「未来ある若者を殺すことに、ですか?」)


"Yeah."


(「そうだ」)


男のぶっきらぼうな肯定に、レクシアは一歩詰め寄り、その冷たい指先で男の胸板をトンと突いた。


"Listen well. We did indeed receive an advance payment. However... should an unforeseen disaster arise, the reward hardly justifies the cost."


(「いいですか? 私たちは確かに前金を受け取りました。ですが……不測の事態が起きれば、割に合いませんよ?」)


"……"


沈黙する男の双眸に、獲物を狙う獣のような鋭い光が宿る。


それを見たレクシアは、歓喜に肩を震わせて嬌声を漏らした。


"Hehe! Ah, those eyes of yours... they send absolute shivers down my spine! You truly are the very man who dragged me from that dungeon. It seems you have concocted a scheme of your own, haven't you? May God bless whatever thought has crossed that wicked mind."


(「ふふ! 貴方のその目……ゾクゾクします。やはり、あの地下牢から私を連れ出してくれた殿方ですね。何か思いついたご様子ですね? 貴方の考えが上手くいくよう、心より願っていますよ」)


男はニヤリと不敵に口元を吊り上げ、コートの襟を立てた。


"Leave it to me."


(「任せろ」)


二人の影は黄昏の茜色に溶けるように、屋上の冷たい風の中へと消えていった。




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