おまけ:とある地方の過去 —— 出会い
放課後の夕暮れ時
茜色に染まる神社の裏手、古い祠の影でランドセルを背負ったまま立ち止まる。
「ねぇ? お腹空いた」
不意にかけられた声に振り向くと、そこには自分と同じくらいの背丈の少女が立っていた。
透き通るような白い肌に、色素の薄い髪。
昔話に出てくる雪女みたいな、妙に綺麗な子だった。
「……なにしてるん?」
「いい?」
「えっ? 何が?」
「お腹、すいてるの」
「えっ? お腹空いてる? ……んーと、給食の残りのコッペパンならあるぞ。やるよ?」
ランドセルの横ポケットをごそごそと探り、ビニール袋に包まれたパンを差し出そうとした。
だが、その白い少女は小さく首を横に振る。
「それはいらないよ? ……いただきます」
「え?」
次の瞬間、ふわりと冷たい香りと共に、小さな両腕が胸元へと抱きついてきた。
「うわっ……!?」
ぎゅっと抱きしめられた瞬間、胸の奥から温かいものがスーッと吸い出されていくような、不思議な感覚が走った。
「あれ……? なんか、力抜ける……」
膝がガクンと折れそうになり、ふらつく身体を支えるように、少女は満足そうに目を細めて顔を上げた。
その頬には、ほんのりと赤みが差している。
「ん……ごちそうさまでした。いっぱいもらったから、私、貴方をずっと守るね?」
「守る……? 意味わからんけど、なら友達になって?」
へたり込んだまま見上げると、少女は無邪気な笑みを浮かべた。
「望むなら、嫁にもなれるよ?」
「よ、よめ……? う〜ん、よくわかんないから、とりあえず友達!」
「ふふっ、うん! わかった。お友達ね」
少女は嬉しそうにパッと笑い、差し伸べられた小さな手をぎゅっと握り返してくれた。
冷たかったはずのその指先は、さっきよりもずっと温かくなっていた。




