おまけ:裏路地の処刑
薄暗く湿った裏路地
冷たい雨がコンクリートを濡らす中、男の荒い足音と引きずられる音が響いていた。
"Damn it, you filthy pig!"
(「畜生、この豚野郎め!」)
壁際に追い詰められ、血塗れで這いつくばる標的の男が、震える両手を上げて命乞いをする。
P-Please... forgive me! Have mercy!
(「た、頼む……許してくれ! 慈悲を!」)
"As if I'd ever forgive you!"
(「誰が許すかよ!」)
引き金を引く指に躊躇は一切なかった。
バン! バン!
火花と共に銃声が夜の闇に木霊し、標的の頭部に鉛の弾丸が容赦なく撃ち込まれる。
跳ね上がった肉体が、ピクピクと痙攣したのちに完全に動かなくなった。
硝煙が漂う中、背後の暗がりからコツコツと澄んだ足音が近づいてくる。
"My, what a terrible thing to do."
(「まあ、なんて酷いことをなさるのでしょう」)
"Shut the hell up."
(「うるせぇ」)
煙草に火をつけながら吐き捨てる男に、影から現れた女はくすりと艶やかに微笑んだ。
"Well, let's just interpret it as him receiving salvation from God... though I am that very God."
(「まあ、神から救いを賜ったのだと解釈しておきましょうか……もっとも、私こそがその神なのですけれど」)
"Hurry up and make him disappear."
(「ちゃちゃっと消してくれ」)
"Certainly. But first, a kiss, please. My magical energy is running terribly low."
(「ええ。ですがその前にキスをお願いします。魔力がひどく足りていませんので」)
"Tsk... Fine, whatever."
(「ちっ……仕方ねえな」)
男が渋々引き寄せると、女の冷たい唇が重なった。
ちゅ……
"Ow! Dammit!"
(「痛っ! クソが!」)
"Hehe, I couldn't resist giving your lip a little bite."
(「ふふ、唇を少し噛ませていただきました」)
唇を舐めながら妖しく目を細める女を、男は鬱陶しそうに睨みつける。
"Hurry it up!"
(「早くしろ!」)
"Yes, yes."
(「はいはい」)
女が指先をすっと一閃させると、足元に転がっていた死体は紫紺の炎に包まれ、煙すら残さず一瞬で塵となって消え去った。
"Convenient trick for a hitman."
(「殺し屋には便利な能力だな」)
"Isn't it? Shall we move on to the next one?"
(「でしょう? 次へ向かいましょうか」)
"Yeah, yeah."
(「へいへい」)
二人は雨の降る闇の中へと、足音を忍ばせて溶け込んでいった。




