123話 戻った『0』と先生の違和感
訓練場にクラス全員が集められると、担任が新しい測定器を台座にドンと置いた。
「お前たち、待たせて悪かったな。新しい予備の測定器が届いたから、中断してた測定を再開するぞ。……西条、まずはお前からだ」
「はい」
前に出ると、周囲のクラスメイトたちから一斉に囁き声が漏れる。
「おい、前回の爆発ってマジで機械の故障だったのか?」
「西条、実は隠れた規格外だったりしてな……」
ざわつく視線を浴びながら、俺は新調された水晶球へ静かに両手をかざした。
すん……
激しい光も爆発もなく、水晶球は淡く濁った光をわずかに灯しただけで静まり返った。
「……数値は魔力『0』、測定結果はDランクだな」
「そうですか」
いつも通りの最低ランク判定に淡々と頷く。
しかし、数値を記録しようとした担任が、水晶の内部を凝視しながら怪訝そうに眉をひそめた。
「……だが、おかしいな」
「何がですか?」
「いや……なんでもない。気のせいだ」
担任はそれ以上追求せず、出席簿にペンを走らせて次の名前を呼んだ。
「次! 葛西」
「おう、俺の番だな!」
交代した葛西が勢いよく手をかざすと、水晶球が程よい緑色の輝きを放った。
「葛西、Cランクだ」
「よっしゃ! 前より少し上がったぜ、西条!」
「良かったな」
葛西が満足げに拳を握りしめる横で、俺は先ほど担任が見せた不可解な表情が少しだけ引っかかっていた。
【放課後 —— 昇降口】
靴を履き替えていると、パタパタと小走りで忍が駆け寄ってきた。
「兄さん! 今日の魔力再測定、どうでしたか?」
「? いや、特に変わらなかったよ。前回と同じでDランク判定だった」
「そうですか……それは少し残念でしたね。でも! 兄さんには私がついていますから、魔力がなくても何の問題もありませんよ!」
自分のことのように胸を張って励ましてくれる忍の健気さに、思わず口元が緩む。
「そうだな。いつも助かってるよ」
自然と伸びた手で、忍の柔らかな黒髪を優しく撫でた。
「なでなで……」
「……っ! はいっ♪」
忍は頬をほんのり桜色に染め、嬉しそうに目を細めて俺の掌の温もりに身を委ねるのだった。




