122話 朝起きたら増えていた
「……さて、寝るか」
度重なるハプニングに疲れ果て、俺は自室の布団へと潜り込んだ。
深夜。まどろみの中、掛け布団が静かに持ち上がり、ひんやりとした身体が滑り込んでくる気配がした。
(……また忍が来たか)
いつものことなので特に咎める気も起きず、俺はそのまま眠りに身を任せることにした。寝ぼけ眼のまま、無意識にその頭へと手を伸ばし、優しく撫でる。
「なでなで……」
「……あっ……♪」
小さく嬉しそうな吐息が漏れ、擦り寄ってくる感触を最後に、俺の意識は再び深い眠りへと沈んでいった。
翌朝
隙間から差し込む朝日の眩しさに目を覚ました。
「ふぅ……ん? あれ?」
布団がやけに重く、両脇から尋常ではない密着感と温もりを感じる。
視線を落とすと、掛け布団の中に二つの大きな膨らみがあった。
右を向けば、俺の腕を抱きしめて幸せそうに眠る忍。
左を向けば、俺の胸元に顔を埋めてすやすやと寝息を立てる陽向先輩。
(……前にもこんなことあったな)
既視感に苦笑しつつ、起こさないように両手を伸ばし、二人の頭を同時にぽんぽんと撫でてやる。
「……んぅ……兄さん……」
「えへへ〜……後輩く〜ん……むにゃ……」
二人とも夢の中で心地よさそうに微笑んだまま、起きる気配はない。
(このままだと身動きが取れん。とりあえず、先に顔でも洗ってくるか)
両腕を器用にすり抜けて布団を抜け出し、俺は一人静かに洗面所へと向かった。
——数分後。
蛇口をひねって冷たい水で顔を洗い、タオルで水気を拭いていると、自室の方からドタバタという派手な物音が響いてきた。
「忍ちゃん! 痛いよ〜〜っ! 耳引っ張らないで〜〜!」
「何で兄さんじゃなくて貴方なんですかぁぁぁッ!? 」
「えへへ〜、なんでだろ〜〜?」
「笑い事じゃありませんッッ!!」
朝っぱらから全力の怒声と悲鳴が廊下にまで木霊する。
「……騒がしいな、あいつらは本当に」
俺はやれやれと首を振りながら、朝食の準備をするためにキッチンへと向かうのだった。




