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116話 吸いきれない魔力

放課後、昇降口で靴を履き替えていると、忍が駆け寄ってきた。


「兄さん! 今日の魔力測定、どうでしたか?」


「測定器が壊れたから分からなかったんだ。だから後日、再測定になった」


「そうですか……。私は特に変わらず、いつも通りの数値でしたよ」


「そうか」


「はい!」


にこやかに微笑む忍を見て、俺は鞄を持ち直した。


「兄さん、私ちょっと寄るところがあるので、先に行っててください」


「分かった。校門のところで待ってる」


「はい、兄さん! すぐ戻りますね!」


忍は手を振りながら、軽やかな足取りで廊下の奥へと走っていった。


◇◇◇


角を曲がり、兄さんの足音が完全に遠ざかったのを確認した瞬間。


忍の表情から愛らしい笑みがスッと消え失せ、冷徹な神格の光がその紅い瞳に宿った。


(……やっぱり、今朝は吸いきれませんでしたね)


毎晩、兄さんが気づかないように、魔力が空になるまで吸収していたはずだった。


しかし、少しの魔力で測定器を壊すほどの魔力圧。


「面倒ですね」


兄さんを永遠に自分の腕の中に閉じ込めておくために、これ以上の成長は邪魔でしかなかった。


忍は薄暗い廊下の窓から夕暮れの校庭を見下ろし、妖しく唇を吊り上げた。


「……あの人を、使いましょう。ふふっ……」


新たな駒を思い浮かべ、忍は音もなく闇の中へと微笑むのだった。



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