130/167
116話 吸いきれない魔力
放課後、昇降口で靴を履き替えていると、忍が駆け寄ってきた。
「兄さん! 今日の魔力測定、どうでしたか?」
「測定器が壊れたから分からなかったんだ。だから後日、再測定になった」
「そうですか……。私は特に変わらず、いつも通りの数値でしたよ」
「そうか」
「はい!」
にこやかに微笑む忍を見て、俺は鞄を持ち直した。
「兄さん、私ちょっと寄るところがあるので、先に行っててください」
「分かった。校門のところで待ってる」
「はい、兄さん! すぐ戻りますね!」
忍は手を振りながら、軽やかな足取りで廊下の奥へと走っていった。
◇◇◇
角を曲がり、兄さんの足音が完全に遠ざかったのを確認した瞬間。
忍の表情から愛らしい笑みがスッと消え失せ、冷徹な神格の光がその紅い瞳に宿った。
(……やっぱり、今朝は吸いきれませんでしたね)
毎晩、兄さんが気づかないように、魔力が空になるまで吸収していたはずだった。
しかし、少しの魔力で測定器を壊すほどの魔力圧。
「面倒ですね」
兄さんを永遠に自分の腕の中に閉じ込めておくために、これ以上の成長は邪魔でしかなかった。
忍は薄暗い廊下の窓から夕暮れの校庭を見下ろし、妖しく唇を吊り上げた。
「……あの人を、使いましょう。ふふっ……」
新たな駒を思い浮かべ、忍は音もなく闇の中へと微笑むのだった。




