13話誰も組んでくれないんです!
「はい、兄さん。あ〜ん」
「おう、あ〜ん……」
中庭のベンチで、忍が卵焼きを箸でつまんで差し出してくる。そのまま口に運ぶと、隣に座っていた直哉が呆れたようにジュースをすすった。
「西条、お前ホント愛されてるなー」
「そうか? 普通だろ」
「どこがだよ!……あ、そういえば今日もダンジョン行くだろ? 西条」
「当たり前だろ。強くなるためだからな」
俺の即答に、隣の忍が嬉しそうに目を細めた。
直哉は立ち上がりながら、忍に向かって軽快に手を振る。
「妹さん、今日も西条借りるぞー?」
「……」
一瞬、忍の瞳から光が消え、無言の圧力が直哉を襲う。
「……? 妹さん……?」
「はい。兄のこと、よろしくお願いしますね?」
「? お、おう! 任せろ!」
直哉は何のプレッシャーも感じていない様子で親指を立てた。
忍は俺に向き直り、名残惜しそうに袖を掴んでくる。
「兄さん、私も一緒に行きたいのですが……Sランクはまだ授業が忙しくて。ごめんなさい……」
「そうか。気にすんな、無茶はしないから」
「はい!」
そんな和やかな雰囲気を叩き割るように、高飛車な声が割り込んできた。
「ちょっと! 私も混ぜてくれないかしら!?」
「「?」」
見上げると、仁王立ちした王城舞香が俺たちを見下ろしていた。
「その……ダンジョン攻略に決まってるでしょう!?」
「どうする、西条?」
「前も言ったが無理だ。足を引っ張られそうだし」
「だっ、そうだ! 俺たち初心者パーティだしな!」
「お、お願いしますっ! 私、誰ともパーティ組んでもらえないんです……! 頼むから連れていってぇぇ!!」
プライドをかなぐり捨てて俺の服の裾にしがみついてくる舞香。あまりの必死さに溜息が出る。
「……わかった、わかったから離せ」
「ふん! 最初からそう言えばいいのよ!」
涙目から一転して胸を張る舞香に、隣の忍が完璧な微笑みを向けた。
「何よ……! 西条妹!」
「いえ……あまり女性が、男ばかりのパーティに入らない方がいいですよ? 何をされるか分かりませんし……ね? 」
「うっ、うるさいわね! 誰も組んでくれないんだから仕方ないじゃない!!」
「そうですか……ふふ」
「ふんっ! じゃあ放課後ね!」
舞香がフンと横を向いたその時、少し離れた廊下から、気取った男の声が響いた。
「忍! こんな所にいたのかい?」
「……ッ」
声の主は、白を基調とした絢爛な制服を着た男だった。
舞香を見て、あからさまに見下すような鼻で笑う。
「王城さん? どうしてここに?」
「……どうやら、愚妹もいるみたいだね?」
「ッッッ……! 兄上様……」
舞香の顔が引きつり、悔しそうに拳を握りしめる。どうやらこの高圧的な男は、王城の兄か?
「忍、こんな場所にいたら君の才能が穢れてしまうよ。さあ、早く戻ろう?」
男が手を差し伸べる。
忍は男の手を見たあと、なぜか振り払わず、ちらちらと俺の顔を窺った。
忍は潤んだ瞳で俺を見つめ、守りを求めるように小さく声を漏らした。
「あ……兄さ〜ん……」
「……」
俺は無言で、最後の一切れの唐揚げを口に運んだ。
そのまま男に腕を引かれ、連れて行かれる忍。
「助けなくてよかったのか……?」
「あっ……まあな。大丈夫だろ、忍だし」
「お前、実の妹だろ!?」
直哉のツッコミを聞き流しながら、俺は空になった弁当箱を閉じた。




