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12話 嘘ですよね、兄さん

キーンコーンカーンコーン——


昼休みのチャイムが鳴り響くと同時に、教室の引き戸が静かに開いた。


「兄さん!」


愛くるしい声とともに姿を現したのは、薄桃色の髪を揺らした忍だった。


Sランククラスの制服を着た少女の登場に、Dランクの教室が一気にざわざわと騒がしくなる。


「おい、あれSランクの生徒だろ……?」


「なんでDランクの教室に……?」


「西条の妹らしいぞ」「マジかよ、意味分かんねえ……」


生徒たちの視線が集まる中、忍は一切気に留める様子もなく、まっすぐに俺の席へと歩み寄ってきた。


「どうした、忍?」


「少し、こっちに来てください」


忍は俺の袖をちょんと引っ張り、廊下の隅へと俺を誘った。

人目がなくなったところで、彼女はすっと上目遣いに俺の瞳を覗き込んでくる。


「兄さん……朝渡した紙、持っていますか?」


「あー……すまん、失くした」


本当は保健室の先生に没収されたのだが、変な心配をかけたくなかったので「失くした」と誤魔化してみた。



「……嘘ですよね」


ボソリと、耳元で囁かれた。

あまりの落差に、俺の背筋にゾクリと冷たいものが走る。


「……?」


俺が息を呑んだ次の瞬間、忍はパッといつもの可憐で眩しい笑顔に戻った。


「そうなんですか〜! 兄さんったら、ふふ、おっちょこちょいですね?」


「……まあ、悪いな」


「いえいえ! 良いんですよ、無事なら。……それより兄さん、ご飯一緒に食べましょう?」


「おう、そうだな」


忍は嬉しそうに俺の腕に抱きつき、一緒に中庭のベンチへと歩き出した。


——しかし、俺の腕に触れる忍の指先は、まるで氷のように冷たかった。





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