114話 神様からの忠告
冷え込みが一段と厳しくなり、こたつから抜け出せない冬の朝。
ぽかぽかと温まるリビングでみかんの皮を剥いていると、華やかな晴れ着姿の忍がパタパタと小走りでやってきた。
「兄さん! あけましておめでとうございます!」
「あけおめ」
「ふふっ。兄さん、行きませんか? 今年の初詣」
「……そうだな、行くか」
防寒着を羽織り、二人で近所の神社へと向かった。
境内は新年の参拝客でごった返しており、露店の賑やかな声と冷たい冬晴れの空気が入り混じっている。
「兄さん! 早く早く、あっちです!」
「忍、待て。こっちに来い」
「? はい」
人混みに流されそうになる忍の手を、俺はグッと引き寄せて指を絡め、しっかりと握りしめた。
「ぎゅっとな。……これなら逸れないだろ?」
「……っ! はい! ありがとうございます……!」
耳まで真っ赤にして幸せそうに微笑む忍の手は、冬の寒さの中でもじんわりと温かかった。
長い行列を並び、ようやくおみくじの引き場へとたどり着く。
「おみくじ、私たちの番ですね。ようやく引けます!」
「よし、引くか」
初穂料を納め、木筒から出た番号の引き出しから紙を受け取る。
忍のおみくじ:
『恋愛:思い強ければかえって遠ざかる。焦らず待つべし』
章のおみくじ:
『待ち人:遠く離れることあり。されど己を強く信じれば、必ずや元へと戻らん』
「……なんだか、ずいぶんと不穏で変なおみくじですね?」
「……執着?」
「忍、何か心当たりあるのか?」
「まったくありません!」
「そうだな……神様も随分と厳しいことを言う」
苦笑いしながら二人でおみくじを結び処に括り付け、本殿の参拝列へと並んだ。
賽銭箱に小銭を投げ入れ、二礼二拍手一礼。冷たい風の中、二人は静かに目を閉じて手を合わせる。
(兄さんと一生一緒にいられますように。……それと、兄さんに群がる害虫どもが二度と近寄ってきませんように)
(忍が今年一年、怪我なく幸せでありますように。……それと、葛西たちと無茶をせず無事にダンジョンを攻略できますように)
それぞれの切実な願いを胸に手を下ろし、顔を見合わせる。
「さて……もっと混まないうちに帰るか、忍」
「はい! お家でまた、お雑煮を温め直しますね!」
冷えた指先をもう一度ぎゅっと握り直し、俺たちは暖かな家へと並んで歩き出すのだった。




