111話 全力で手を抜きますわ
委員長が大きく手を叩き、コロシアムの中央で通る声を張り上げた。
「みんなー、集まってー! 〇〇くんと〇〇ちゃんは前衛で防御に専念! ▲▲くんたちは後方で回復お願い! とにかく敵を倒さないように、外向きに円陣を作って時間を稼ぐよー!」
「わ、わたくしは!? わたくしは何をすればよろしくて!?」
役に立ちたい舞香が、目を輝かせてグイッと身を乗り出す。
「王城さんは……!」
「はいっ!!」
「……えーっと、できるだけ何もしないで!」
「結局それなんですのーーーーッ!?」
舞香の絶叫がコロシアムに響き渡る中、クラス全員が指示に従って円陣を組んだ。
「……やぁ〜」
「……とりゃ〜」
「……ほら〜、あっち行け〜」
「……くらえ〜(小声)」
全員がかつてないほど脱力し、まるでスローモーションのような腰の引けた攻撃でモンスターをいなしていく。しかし、悲しいかな相手の耐久が低すぎて、軽く突いただけでポロポロと崩れてしまう。
「あぁっ! また倒しちゃった! ごめん!」
「ダメだって! できるだけ防御に徹して、絶対にトドメは刺さないで!」
「は、はいっ!」
奇妙な持久戦を続けること数分。コロシアムの中央に巨大な魔法陣が浮かび上がり、地響きとともにフロアのボスモンスターが姿を現した。
「王城さん!」
「な、何かしら!?」
「できるだけ……最小限の魔力で、あのボスだけを一撃で倒せる!?」
「も、もちろんですわ! この王城舞香にお任せあれ!」
胸を張る舞香に向け、周囲の生徒たちから必死の念押しが飛ぶ。
「王城!? 頼むからちゃんと威力抑えろよ!?」
「余計な範囲魔法に巻き込んで雑魚まで消し飛ばすなよ!?」
「王城、分かってるな!?」
「王城! 信じてるぞ王城!!」
「分かってますわよ!! 何度も言わないでくださいまし!!」
舞香は魔導杖を構え、狙いをボスの頭部一点だけに極限まで絞り込んだ。
「はぁぁぁっ……『アクア・ピアッサー』ッ!」
放たれたのは、針のように細く圧縮された高圧水流のレーザー。
閃光は雑魚モンスターの群れを一筋の隙間を縫ってすり抜け、ボスの眉間だけを寸分の狂いもなく貫き、その頭部だけをピンポイントで弾き飛ばした。
ズバァァァンッ!!
ボスが倒れた瞬間、コロシアム全体がまばゆい転移の光に包まれる。
視界が開けると、全員が無事にダンジョンのエントランス前へと戻されていた。
「ふぅ……なんとか、討伐数とスコアを抑え込めたみたいだな」
「そうだな。あとは……他のクラスがこの『4位が一番の当たり』っていうカラクリに気づいてないかどうか、それだけだな」




