110話 目指せ最弱! 全力で負けにいけ!
試験最終日。
ダンジョン最深部へと続く大扉の前に、クラス全員が集結していた。
「王城さん、ここでお留守番ね。」
「そ、そんなぁ……っ!」
完全に戦力外通告を言い渡された舞香が、入り口の隅っこで体育座りをして項垂れる。
「じゃあ、扉を開けるね?」
委員長が巨大な石扉に手を掛け、力を込めた。
ギィィィ……
「えっ……!?」
扉が開いた瞬間、床一面に禍々しい紫色の魔法陣が浮かび上がり、目も眩むような閃光が全員を包み込んだ。
パァァァッ!
強制転移。視界が切り替わった瞬間、そこは四方を断崖絶壁に囲まれた、逃げ場のないコロシアムのような広間だった。
「な、なんでわたくしまで転移していますの!?」
「そんな……もしかして、扉を開けた瞬間にエリア内にいた全員を巻き込むトラップ部屋か!?」
慌てる生徒たちの前に、咆哮とともにワラワラと大量のゴブリンやスケルトンの群れが湧き出してきた。
「みんな! できるだけ倒すなよ!? 4位狙いなんだからスコアを稼ぐな!」
「分かってる!」
「任せて!」
各自が武器を引っ込め、回避や受け流しに徹しようとする。だが——
「あっ! やっちまった、小突いただけなのに首折れた!」
「くそっ! 俺も盾で防いだだけで相手が砕け散ったぞ!」
「やばいやばい! こいつら弱すぎるんだよ! 当たっただけで勝手に死ぬ!」
「ダメだよぉ! 倒しちゃダメぇぇ!」
「分かってるけど、向こうから勝手に突っ込んできて自滅するんだよ!」
勝手に加算されていく討伐スコアに、阿鼻叫喚のパニックが広がる。
このままでは確実に1位を維持してしまい、海外のモンスター送り確定だ。
「なぁ、西条?」
「?」
「これ、マジでヤバくねぇか……!?」
「そうだな……何か手を打たないと」
額に冷汗を浮かべながら回避を続ける俺の横で、葛西がふと何かを思い出したように目を見開いた。
「……なぁ西条。初日、確か俺たち『最下位』だったよな?」
「うん? そうだな、あの時は……ッ! ……それだ、葛西!!」
「?」
俺は人混みの向こうでオロオロしている委員長へ向けて、大声で叫んだ。
「委員長ーーッ!」
「? なにー、西条君!?」
「全体指示を出してくれ! 初日みたいに、お前が全員の指揮を執るんだ!!」
「あっ……そうだね! 了解っ!」
初日、俺たちは委員長の指揮で全員が固まって行動した。あの日だけ、俺たちは最下位だった。
そしてパーティごとに分散した翌日、魔石の総獲得数は大して増えていないのに順位は4位まで上がった。
なら——理由が何であれ、初日と同じ状況を再現すればいい。




