101話 目指せ豪華旅行! クラスの戦力を把握せよ!
参加を辞退してもいいという担任の言葉に、一人の男子生徒がおずおずと手を挙げかけた。
「せ、先生……俺、辞退……」
その瞬間。
教室中のクラスメイトたちから、「抜け駆けして最下位になったらどう責任取る気だ」と言わんばかりの血走った視線が一斉に突き刺さる。
「……ッッッ、い、いえ……何でもありません! 全力で参加します!」
「? そうか。なら、ホームルームの残り時間は各自で作戦会議でもしてろよ」
「「「は〜い」」」
担任が職員室へ戻ると、教卓の前にクラスの委員長が立ち、手をパンと叩いた。
「さて、みんな! クラスで上位を狙うために、まずは誰がどんな能力を使えるか、お互いに手の内を言い合おうよ!」
その無邪気な提案に、直哉が腕を組んで待ったをかける。
「おいおい委員長、それは無理があるぜ? 普段はパーティごとに競ってるんだぞ? いきなり全部手の内を晒すのは抵抗あるだろ」
「? いいんじゃないかな? だって、同じクラスの仲間同士なんだから! ここで全員が信じ合って連携を組まないと、他のクラスに負けて最下位の補習になっちゃうよ?」
「ぐっ……それもそうだが……。なら、言い出しっぺの委員長から言ってくれるか?」
「うん! 私はね、後方支援と結界術が得意なの!」
委員長を皮切りに、次々とクラスメイトたちが自分の特性を明かし始めた。
「俺は……前衛の盾役と打撃系だ」
「私は……索敵と中距離の風魔法ですよ?」
教室内が自己紹介で盛り上がる中、俺は机の下でルーズリーフを取り出し、発言された能力や戦力を無言でササッとリスト化してメモにまとめていた。
「西条君は?」
不意に委員長から水を向けられ、俺はペンを止めて顔を上げた。
「……俺は刀だけだ。接近戦以外、特に何もない」
「うん、分かった! じゃあ次は王城さんだけど——」
「わたくしはですね! 王城家に伝わる高火力の殲滅魔法と、状況に応じた補助魔法を——」
「うん、王城さんは攻撃魔法だね! さて次は葛西君!」
「なんで遮るんですのーーッ!?」
プンスカと怒る舞香を華麗にスルーし、委員長は直哉に視線を向ける。
「俺か? 俺は長槍を使った中距離での刺突と、近接の足止めだ」
「うん! 了解!」
ポンポンとテンポよく全員の聞き取りが進み、委員長が満足げに拳を突き上げた。
「よし! これで全員分が終わったね? 他のクラスに勝って豪華旅行を勝ち取るために、明日からみんなで頑張ろー! えいえい……?」
「「「おーーーっ!!」」」
補習回避という共通の恐怖に団結したクラスメイトたちが、気合十分で作戦を練るために次々と教室を出ていく。
俺もノートを鞄にしまって席を立とうとした、その時だった。
「西条君?」
いつの間にか横に立っていた委員長が、人懐っこい笑顔で俺の机を覗き込んできた。
「?」
「……今のクラス全員の能力、全部きれいに紙にまとめてくれたんでしょ?」
「……あ」
隠して書いていたはずなのに、完璧に見抜かれていたらしい。委員長は悪戯っぽく微笑み、指を二本立てて見せた。
「そのまとめ、後でコピーして私にも頂戴ね?」
「……分かったよ」
俺が苦笑いしながら頷くと、委員長は「助かる〜!」と満足そうに笑って手を振るのだった。




