99話 お嬢様、修行の成果
朝の教室。
いつものように直哉と席の近くで駄弁っていると、教室の扉がガラッと華やかに開いた。
「ふふ、お二人とも! ただいま戻りましたわ!」
腰に手を当て、胸を張ってポーズを決める舞香。
「おう、そうだな」
「おっ、王城! ついに学校復帰か!」
俺たちのあっさりとした反応に、舞香はカクッと肩を落とし、ぷくっと頬を膨らませた。
「お二人とも! 昨日あの現場で会ったからと言って、反応が普通すぎますわよ!? もっとこう……『待っていたぞ舞香!』みたいな感動の再会はないのですか!?」
「いや、それはそうだけどよ……。それより舞香、例の当主修行はどうだったんだ?」
「…………」
直哉の問いかけに、舞香の瞳からスッとハイライトが消え、遠い虚空を見つめ始めた。
「……第、一段階目は……なんとか終了いたしましたわ……ふふ、ふふふ……はぁ……」
王城家の地獄を物語るような乾いた笑いと深すぎるため息に、俺と直哉は顔を見合わせて引きつった笑いを浮かべるしかない。
「ま、まぁ生き残ってよかったじゃねえか! よっしゃ、放課後は久しぶりにこの3人でダンジョン行こうぜ!」
「ええ、望むところですわ!」
【放課後 —— ダンジョン12階層】
洞窟の奥から、低いうなり声とともに全身を紅蓮の炎で包んだ魔獣——ヘルハウンドが姿を現した。牙を剥き出しにして、こちらへ飛びかかってくる。
「私にお任せくださいまし!」
前に出た舞香が、洗練された無駄のない動作で魔導杖を振るう。
「『アクア・バレット』!」
放たれた高圧の水球がヘルハウンドの胴体へ正確に直撃し、ジュウウッ! と激しい水蒸気を上げながら纏っていた業火を一瞬で鎮火させた。
「今ですわ、直哉さん!」
「おうっ!」
炎の推進力を失い体勢を崩した魔獣へ、直哉が鋭い踏み込みから長槍を一閃。心臓を一突きで貫き、トドメを刺した。
「どうでしょう? ……おっと、油断なさらず、周囲の警戒を怠らないでくださいまし?」
杖を構え直したまま、油断なく周囲の索敵を行う舞香の横顔を見て、直哉が小声で俺の肩を小突いてきた。
「なぁ、西条?」
「おう?」
「あいつ……なんかめちゃくちゃ頼もしくなってねぇか?」
「ああ、俺も思った」
以前のようなお嬢様特有の隙がなくなり、冒険者としての判断力と動きが格段に研ぎ澄まされている。
王城家の修行は伊達ではなかったらしい。
「? なんですの、お二人でコソコソと?」
怪訝そうにこちらを振り返る舞香に、俺たちは苦笑いしながら手を振った。
「いや、なんでもない」
「なんでもないぜ! 頼りにしてるぜ、お嬢様!」
「もう、からかわないでくださいまし!」
舞香の文句混じりの声が響く中、俺たちは久しぶりに揃った3人のパーティで、順調にダンジョンの深部へと歩みを進めるのだった。




