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95話 戦うほどに

「さっさと来い? 忍ちゃんで遊ばんといけんからな」


坂倉が下卑た笑みを浮かべて煽り立てる。


その瞬間、章の放った不可視の斬撃が空を切り裂いて飛来した。


「だから、そんなもん効かんて言うとるやろ——」


ズガァァァンッ!!


槍の柄で受け止めた坂倉の腕に、ビリビリと痺れるような衝撃が走る。


(……? さっきより明らかに重い……!?)


坂倉が眉をひそめた刹那、章は地面を爆砕するほどの踏み込みで一瞬にして間合いをゼロにした。


怒りに燃える『小虎』の刃が真上から振り下ろされる。


坂倉は咄嗟に槍をクロスさせて刃を受け止め、そのまま遠心力を利用して章の腕を巻き込み、豪快に背負い投げを放った。


ドゴォッ!!


「ぐっ……!」


「ふぅ……危ないわー。あんさん、さっきより動き早くなってへんか?」


息を吐く坂倉の前で、章は痛みなど感じていないかのように、ふらつきもせずスッと立ち上がる。


「……」


「まぁええわ。これ以上は手加減せん、容赦せんで?」


それから、数十分もの死闘が続いた。


ズガァァァァンッ!!


「ぐっ……なんや、その威力は……!?」


吹き飛ばされたのは坂倉の方だった。壁に背中を激突させ、槍を構え直す。


章が無言で刀を横薙ぎに振り抜いた瞬間、坂倉の野生の勘が全身に警鐘を鳴らした。


(ゾクッ……!!)


本能のままに頭を低くして回避した刹那、坂倉の頭頂部の髪が数本、綺麗に切り落とされる。


「あ、危ないわ! アホか、今のは掠っただけで死ぬところやったで!?」


「……死ね」


感情の消えた声で再び切っ先を向けてくる章に、坂倉の額から冷や汗が吹き出す。


「ちょ、ちょっ待ちぃな! 降参や、僕の負けやで!?」


ブゥンッ!!


容赦なく振り下ろされる追撃の刃を、坂倉は泥臭く床を転がって間一髪で躱した。


(うわ……っ! やばいわ、こいつ全然魔力が尽きひんどころか、戦うたびに逆に増えていっとるやんけ……! )


坂倉の頬から汗が垂れる、その時だった。


「——そこまでにしなさい、西条君」


冷徹で、よく通る凛とした声が倉庫内に響き渡る。


「? ……せん、せい……?」


章の動きがピタリと止まる。


振り返った入り口の光の向こうには、怒気を孕んだ瞳で白衣を翻す静香先生が立っていた。



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