↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/168

93話 逆鱗

「クソッ……格好つけたはいいが、こりゃマジでヤバいな……!」


葛西は息を乱しながら、全方位から迫る狐の式神を睨み据えた。


「よっとぉ!」


飛びかかってくる一体の爪を槍の柄で弾き、返す穂先で別の一体を牽制する。


だが、倒しても倒しても闇の中から新たな影が湧き出してくる。


(ジリ貧だな……数が多すぎる!)


焦りが一瞬の隙を生んだ。葛西の背後、死角から鋭い爪を光らせた狐が音もなく跳躍する。


気づいた時には、すでに槍を引き戻す動作が間に合わない。


「しまっ——」


ドガァァァァァンッッ!!!



真横から放たれた極大の火炎魔法が狐を呑み込み、爆炎が消えた時、直哉を囲んでいた式神が数体まとめて霧散していた。


「怪我はないかしら、葛西さん?」


煙を払いながら現れたのは、凛とした佇まいで魔導杖を構える舞香だった。


「王城……ッ! 遅かったじゃねえか!」


「ええ、急な呼び出しでしたから準備に手間取りましたの。……さて、残りも一気に片付けますわよ? これ以上、油断しないでくださいまし!」


「おうよ! 助かったぜ、一気に行くぞ!」


舞香の合流により、外の戦況は一気に逆転へと傾き始めた。


【一方その頃 —— 廃倉庫の最奥】


「ほな、行こうか?」


坂倉は冷笑を浮かべながら、忍の首輪に繋がれた金属の鎖に手を伸ばした。


「な、何をするんですか……!?」


「散歩やで?」


「ッッッ……嫌です! 離してください……!」


「言うこと聞かんと、どうなるか分からんの? 」


「……っ……ごめんなさい……」


坂倉にグイと鎖を引かれ、忍は首輪をつけられたまま四つん這いで後を追わされていた。


「ほら、ちゃんとついてきいや?」


「……はい……っ」


坂倉はその従順な返事に、歪んだ優越感を満たして満足そうに笑った。


その時だった。


ガララララッ……!!


乱暴に引き戸が開け放たれ、埃混じりの冷気が部屋の中へと吹き込んできた。


「……?」


「……し、の……ぶ……?」


肩で息をしながら飛び込んできた章の視界に飛び込んできたのは、薄着姿で首輪をはめられ、四つん這いで鎖を引かれる妹の姿だった。


「兄さん……ッ! 見ないでください……! お願いします、見ないで……うぅっ……!」


忍は恥じ入るように顔を伏せ、ボロボロと大粒の涙を床に零す。


その痛々しい姿を見た瞬間、章の中で何かが決定的に音を立てて千切れた。


「何や、もう追いついたんかいな? 早いお着きやな、お兄ちゃん」


飄々と肩をすくめる坂倉に向けられたのは、常軌を逸した冷気と、視線だけで命を削り取るような殺気だった。


「……殺す」


低く、地這うような章の宣告に、坂倉はヘラヘラと笑いながら手をひらひらと振った。


「おお〜、怖いわー。やれるもんならやってみぃや?」


静寂に包まれた倉庫の中に、『小虎』の切っ先が静かに坂倉へと向けられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。