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魔将軍のご主人様になりました  作者: 浦 かすみ


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魔将軍はヴェル君です5

たくさんの方からブックマーク頂いてます。

ありがとうございます。拙い文章力ですが

楽しんで頂けるように頑張ります。




 またも室内に異常なほどの静けさが訪れております。流石に気絶したいとはもう思いませんが、先ほどから喉が渇いて仕方ありません。



『レイゾウハコ』の中のヴォルナ取ってきてもいいでしょうか?あはは……ビール飲みたい、クスン。


 パチンッ!


 扇子を手に打ち付ける音で場の静寂が破られました。


 ハッとして音のした方、ラブリーソファに座っておられる王太子夫妻のヴィオお姉様の方を見ると私をジッと見ておりました。


「カデリーナ」


「は……はぃ」


 喉が渇きすぎて、声が掠れていますね、私。


「あなた、魔力切れを起こしたその……彼に治療を施したのよね?」


 お姉様はヴェル君をなんと呼んでいいのか一瞬、躊躇されています。魔将軍様、も不確かだし。ヴェルヘイム様もなんだかなぁ~だし。困りますよね、うん。


 お姉様はフゥと息を吐くと今度はヴェル君を見ました。そのお姉様の目には怒りの感情は浮かんではいません。


「彼の治療を施した時に彼の潜在魔力量、魔力内性質、全部視えたのよね?」


 流石はお姉様。ヴィオお姉様は私ほどではありませんが、癒しの力をお持ちです。先ほどヴェル君をガン見していたのは睨みつけていた訳ではなくヴェル君の潜在魔力量を目視していたのでしょう。それで一つの答えを導かれた、と言う訳ですね。


 ここは正直に私の見解をお伝えしましょうか。


「はい、ヴィオお姉様。ヴェルく、ヴェルヘイム様の魔力の性質等、すべて確認しております」


 ヴェル君は怪訝な顔をしながら、私とお姉様を交互に見ています。


 大丈夫ですよ、ヴェル君!


「あなたの見立てを教えて?」


「はい、お姉様。ヴェルヘイム様の潜在魔力量は、私の魔力量を軽く凌駕しておられます。それに魔力の属質耐性ですが全属性に有効で、魔力抵抗量は無限。つまり……」


「つまり?」


 私は一つ息を吸い込んだ。


「全属性を有効に使用でき尚且つ、全魔力耐性抗体者と思われます」


 私のその発言をお姉様は満足げに聞かれていた。うんうんっと何度も頷かれています。


 突然、ガバッとルーイドリヒト王太子殿下が立ち上がった。


 ワナワナ体を震わせています。


「ばっ馬鹿なっ!全属性が使えるだと!?しかも全属性に耐性があるだとっ!?せっ潜在魔力量がカデリーナより多いだと!?そんな人間が存在するなんてあ……」


 在りえない。


そう叫びかけてルーイドリヒト王太子殿下はハッと気づいたように私、ヴィオお姉様そしてヴェル君をゆっくり見回すと最後に、ヴェル君に視線を止めると唖然として呟きました。


「魔将軍……ヴェルヘイム=デッケルハイン将軍閣下……本物なのか?」


 そんなルーイドリヒト王太子殿下の呟きを受けてヴェル君は小さく咳払いをすると、サラリと髪を掻き上げました。


 やめて下さいその仕草。眩しくて目が潰れます。ですが、眼福です。


「全属性は言い過ぎです。私が治癒魔法を施術をしても、対象者の治癒は正直難しいです」


 ヴェル君、今の私は攻撃的ですよ~お覚悟をっ。


「ですが…先ほど私がこの屋敷に張り直しした魔法障壁の術式、瞬時に解読され、おまけに解術までされましたね?」


 居間に居る皆様がざわつきました。


「なっなっなんだってぇ!?カデリーナの魔法障壁を解読、解術!?」


 ルーイドリヒト王太子殿下、長いな……王太子殿下でいいか、がヴィオお姉様を顧みた。見られたヴィオお姉様が驚愕の表情を浮かべています。


「私でも、解術は無理ですわ。解読はカデリーナに説明されてなんとなく理解できる程度です。ですが、カデリーナの術式を解術出来るのは、私の知る限りこの世界におりません」


 静寂、再びです。今度の静寂は嫌なものではありません。ヴェル君は顔を強張らせていますが、まだまだ畳みかけますよ~


「ヴェルヘイム様は魔術凝りに陥り、今朝まで死にかけておられたのですよ?ルーイドリヒト王太子殿下にも分かりますでしょう?たった一日で、すでに体内魔術の流れは正常で尚且つ、圧倒するほどの魔力量です」


「今朝まで死にかけ?一日で魔術凝りが治ったぁ!?三ヶ月は寝付く重症だぞっ!?」


 王太子殿下、さっきから驚いてばかりだな……と思いつつ話を進めて行きます。


「ゆえの状況から鑑みて、彼はヴェルヘイム=デッケルハイン元将軍閣下だと判断致しました」


「ぅん?元?元とはどういう意味だ?そ、そうだ!今、エーマントに出没している魔将軍っあれは誰だ?魔将軍ではないのかっ?」


 王太子殿下が後ろに控えている護衛の方々をギロリと顧みました。二人いる内の壮年の護衛の方、ロアモンド様が慌てたようにお答え始めました。


「国境沿いのガンドレア側に行軍してきておるようです。辺境伯軍が確認しました所、黒い甲冑、黒い軍馬に騎乗し……その……」


 ロアモンド様はチラリとヴェル君を見ました。


「髪の色は黒曜色、瞳の色は海碧。大層な美丈夫とのことです」


 ヴェル君は少し顔を(しか)めました。


 あらまあ……ヴェル君(偽)も美丈夫さんですか、これはこれは……


「こちらのヴェルヘイム様も推測されておりましたが、エーマントに出没している魔将軍は偽物ではないかと思われます」


 私の言葉に室内がまたざわつきました。


「これもまた私の推測なのですが……ある程度、体格の似ている者に幻視の術を掛けておけば魔将軍を(かたど)ることは可能です。術を使う術者が一度でもヴェルヘイム様を見たことがあり、記憶出来ていれば対象者に術を掛け続けることは可能です。但し……」


 私は一度言葉を切りヴェル君、ヴィオお姉様、王太子殿下の順にゆっくりと顔を向けた。


「あくまで幻視の術です。瞬間の目(くら)ましとしては有効ですが他の術者や高魔力保持者から見ればすぐに正体が見破れます、子供だましです」


ガンドレア軍って馬鹿なんだろうか?


 幻視の術は結構な魔力を使います。その魔力消費量の割には、目晦ましにしか威力を発揮しない術。正直、使い勝手が悪すぎです。私なら使いませんね……馬鹿らしい。


 コレあれですね、幽霊の正体見たり枯れ尾花、てやつですね。うん、本当バカジャネ?


 王太子殿下がここで初めてティーカップに手を伸ばしました。


 おっと、お茶は冷めてますよ。ヒートヒート!


 私はヒートの魔法を王太子殿下のカップに向けてやんわりと届けました。


 王太子殿下は少し驚いてから、ニヤリとこちらに微笑みを向けました。なんだか腹黒い電波を感じますよ?


「ならば、あちらは偽物でこちらが本物ということだな?間違いないな?」


 王太子殿下、何故にヴェル君を見るのですか?ヴェル君困っていますよ。はぁそうですかね?って歯切れの悪い返事しか出来ていませんよ。


「カデリーナ、このレモンパイすっごく美味しいわね。あらやだ、このチョコクッキーも美味しいわ~こんな夜に食べちゃ太っちゃうわ~」


「……」


 ヴィオお姉様はそう言いながら次々とお菓子を口に運んでいます。でたっ!世の中の女子の永遠の免罪符台詞、太っちゃう~のではなくて、太・る・のですよっお姉様っ!


「このモルの甘辛く炒めたものも美味いなっ。さすがカデリーナだっ!おいっ酒は無いのか?」


「ヴォルナならございますが」


「なんだ、あるなら早く持って来いっ!気が利かないな~カデリーナは~」


 っぉおおい!!この腹黒ぉぉ!!


 この上げてから落として来る感じ、ポカリ様に本当に似ている。私は仕方なしにキッチンに向かいました。するとシエラが付いて来てくれます。


「姫様、お手伝いします」


「シエラ、あなた……お姉様達に何か言いましたね?」


「え~?今日、城下町の本屋前で偶然姫様にお会いした時に、ガンドレアの戦記録を購入されていたってお話しただけですよ?」


「誰に話したのよ?」


「ルーイドリヒト王太子殿下です」


 やっぱりあの腹黒かっ!何か野生の勘というか王子の勘でやって来たのですねぇ!


 私はレイゾウハコの中からヴォルナを二本取り出してお盆を持ったシエラに渡しました。シエラはレイゾウハコをキョトンと眺めています。


「姫様、魔法がかかっているその、ハコのようなものなんですか?」


「ああこれは、レイゾウハコと言って今、試作段階なの。一定の温度で食材を保存できる魔法容器よ」


「す、すごいですね!」


「これは一般用だけど、近いうちに業務用のも開発予定だから、ああそうだ、お城の料理長にお話だけでもしておいてくれない?一度現物も見て欲しいし」


「はい、承りました!しかし姫様は本当にすごいですね~あ、新作化粧品『ホワイトクリム』も素晴らしいですね~段々色白肌になりつつあるように感じます!翌朝お肌もプルンとしています」


 私達は手早くおつまみの追加を作り、ポカリ果実水とグラスなど色々と手にして再び居間に戻りました。


 あれれ?


 ヴェル君が王太子殿下の前に座っていますよ?ちょっと和やかムードです。王太子殿下はチョイチョイと指を動かして私を呼びました。


「おいっカデリーナは聞いてるのか?ヴェルヘイムはラブランカ王女殿下に言い寄られてそれを断ったせいで将軍職を罷免されたそうだ!」


なななんだってえぇ!聞いてないよー!?




いよいよヴェル君の過去が明らかに!

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