魔将軍はヴェル君です4
11/6一部文章を追加しています
全体の内容は変更はありません。
キッチンでおつまみを作っていると玄関先に複数人の魔力の気配を感じました。
こんな時間にどなたでしょうか?
コンコン……
軽くノックの音が聞こえます。私は玄関先に行き、外の魔力の気配を探ります。
おや、外の気配の一人は今日城下町の本屋前で会ったメイドのシエラです。
非常に嫌な予感がします。シエラの他の気配に心当たりがあります。この屋敷は三重防御障壁を施してありますので、外からは家の中の気配は分からないはず。
居留守を使おう。息を潜めてノック音を無視します。
コンコン……コンコン……コンコンコン……ゴンゴン、コンコン……ゴンゴン。
最初一人で叩いていたのに途中から二人で叩き出しました。
早く帰って、諦めろ。
「カデちゃん、出ないの?」
「ヴェ……ひぇぇっ!」
後ろにお風呂上がりのヴェル君が立っていました。驚いて変な悲鳴を上げてしまいました。
「声がするわ!?居るんでしょう!早く開けなさい!」
扉の向こうで女性の金切り声が上がります。
うぅぅ……嫌だなぁ~と、グズグズしているとなんと、ヴェル君があっさりとドアを開けてしまいました!
「うわっ!?ちょヴェル君!なんで扉開けられるのっ!?私の許可なく開けられないはずっ」
「さっきカデちゃんが防御魔法の張り直ししている時に、魔法術式見ていたから解けた」
これだからっ!天才とか、魔術の上級術者とか嫌いなんだよぉ~ポカリ様めぇぇ!居ないポカリ様に八つ当たりしている間に、ヴェル君の開けたドアはゆっくりと開いていきます。
ドアの前にはキラキラしい方々が立っていました。夜に天然のスポットライトを当てるのはご近所迷惑なのでやめて下さいと言いたい。
「居るなら早くお開けなさいな、カデリーナ」
ドアの一番前に居たキラキラレディが、ズイィッと屋敷の中に入ってきました。
プラチナブロンドの髪に薔薇色のプルンとした唇、覗く瞳の色は新緑のエメラルド色。
相変わらずの美しさです。眩しいです、はい。
「お久しぶりです……ルヴィオリーナ王太子妃殿下」
「もうっまたその呼び方、いつも通りによん……」
言いかけたまま、ヴィオお姉様は固まりました。
お姉様の視線の先にはヴェル君がいます。ヴィオお姉様はワナワナと震え出しました。
「カ……カ……カデリィナァァ」
「はいぃぃ!?」
「こ、これはぁどういうことですかっ!」
コレ……と言いながら扇子でヴェル君を指し示しています。扇子がプルプル震えています。
ヴェル君、本日二回目のコレ、呼ばわりだね。
「え~と話せば長くなるのですが」
「簡潔に述べなさいっ!」
「美形ですっ!」
「見ればわかりますっ!!」
なんでよぅ……簡潔にって言うからヴェル君を紹介したっていうのに。
「一人暮らしの女性の家にっこんな時間までっ…一体どういう関係なのっ!」
ヴィオお姉様の金切り声に、ヴェル君はコテンと首を傾げてから、ああそれは……と切り出した。
ちょっと待って!すごく嫌な予感がしますよぉ!ダメダメッ!ヴェル君っ!
「俺が奴隷でカデちゃんがご主人様だからだ」
室内が静まり返っております。唾を飲み込む音さえも聞こえそうです。
今、無性に気絶したくなっております。気絶したって現状は何も変わりませんがこの空間から離脱したくてたまりません。淑女らしい気絶って出来ないかな……えぃ!
「とにかく、立ち話もなんだから中に入れてくれないかな?カデリーナちゃん」
て、天の助けです!いつも、うざっ!とか思っててすみません!
私はヴィオお姉様の後ろに居る、キラキラメンズ王子のルーイドリヒト王太子殿下のご尊顔を仰ぎ見ました。
ああ、眩しい王太子殿下っ、今日も安定の眩しさです。
王太子御一行様はゾロゾロと室内に入って来られました。王太子ご夫妻、メイド二名、護衛二名の総勢六名です。圧がすごい…
私は急いで居間に皆様をお通しすると、キッチンで作りかけのおつまみを手早く作り上げ作り置いていたレモンパイの残りとお茶、チョコクッキーとおつまみをお盆に乗せて急いで居間へ向かいました。
空気が重いです。珍しくヴェル君の表情は硬いです。ヴィオお姉様に至ってはヴェル君を睨みつけております。
あぁ……気絶したいです。神様助けてぇ~
しまった……神様って魔とは言えポカリ様も神様だった。祈っても無駄だった。
「では改めて、私はルーイドリヒト=カステカート。この国の王太子だ。彼女は私の妃のルヴィオリーナ。もう分かっていると思うが、そこのカデリーナの実姉だ。で、先ほどの話の続きだけど」
どうやらルーイドリヒト王太子殿下が、この重たい空気感漂う場の司会進行を買って出てくれたようです。
お願いしますっお義兄様っ!!
「掻い摘まなくていいから、しっかりキチンと話して貰えるね?カデリーナ?」
お義兄様はニッコリと微笑まれました。
ああ……そうだ。
ポカリ様に最初にお会いした時に何故か警戒心が湧かなくて、どこか知っているような既視感を抱いていたのは、ルーイドリヒトお義兄様とポカリ様ってなんとなく似ているからですね。
腹黒いのをジワジワと感じさせる微笑とか、王子圧と魔神圧みたいな謎の圧力掛けて来る所とか。私は謎の王子圧に負けてポカリ様と遭遇した部分を隠しつつヴェル君との出会いを話しました。
ヴェル君を奴隷商で見かけた事。魔力切れで死にかけていた事。そのままには出来なくて購入して連れ帰った事。
そしてヴェル君をチラリと見ました。
ヴェル君、ヴェル君の正体をお姉様達にお伝えしてもいいのかしら?
ヴェル君は澄み切ったコバルトブルーの瞳を私に向けましてコクリと頷きました。
よしっ!私も腹を括ろう!
「彼の名前はヴェルヘイム=デッケルハイン。ガンドレア帝国軍、元第二将軍閣下に在らせられます」
さぁ!どうしますか?王太子腹黒殿下!
ヴィオ姉様は妹思いの優しいお姉様です




