3.意思の疎通は難しい(3)
カン違い野郎との意思疎通は難しい。
私はしみじみそう思った。
で、私はというと。
彼の手にあるポッキーに食らいついた。
ポッキーに罪はない。
ポッキーは美味しいのだ。
食べてくれというものを無碍にはできない。
ボキッ
バキッ
口の中で折れながら喉を通過する。
しかし、突き刺さりでもしたら、ヤバイなコレ。
何せ歯がないから小さくは砕けないのだ。
だとしても、胃に入れば消化されるはずだ。
できるだけ小さく折れるように嘴に突っ込む長さを調整しつつ、彼の手のポッキーに食らいつく。
そして、彼の指に邪魔された最後のチョコなしの部分が残った。
そこはそこで堪能せねばポッキーではない。
嘴で挟んで指から引き抜こうかと考えていると。
「ほら、あーん、してみ?」
……いや、別に、いいけど、さ。
彼は小さく残ったポッキーを口の中に放り込んでくれるつもりらしい。
現実としては、実に恥ずかしいシチュエーションだと思う。
私はこんなシチュエーションに遭遇したことはなく、常々鳥肌ものの場面だと思っていた。
ペンギンである今ですら、妙に照れくさい。
しかし、彼は、満面の笑顔だった。
イケメンであることも手伝って、眩しいほどの笑顔だ。
私はペンギン。
そう言い聞かせて、口を開ける。
彼は嘴の中にぽんと置くように入れた。
私はそのまま首をくっと上にあげて喉の奥へと送りこむ。
残念ながら、通過するだけのそれに味はあんまり感じなかった。
近くで嬉しそうな顔に見つめられていては、それもやむなしと思った。
そうして残り二本のポッキーもそうして食した。
が。
「もう終わり、な」
「ゥアッ」
足りない。
三本なんて少なすぎる。
女子高生は食欲旺盛なんだ!
と訴えてみた。
「ゥアッ、ゥアアッ」
「三本って言ったろー? 太るぞ?」
「ゥアッ!」
女子高生にむかって何という禁句!
無神経すぎる奴だ。
「可愛いくおねだりするのは反則だぞ、佐保―」
「ゥアッ!」
これで可愛いのか?
おそらくは、私が彼に向かってゥアゥア言ってるだけだろうに。
彼にはそれが可愛くて嬉しくてたまらないらしい。
「ゥアァ」
おねだりだと思わば思え。
よこせ!
ポッキーをよこすのだ!
私はバタバタと腕を動かし力強く訴えた。
「仕方ないなぁ、もう一本だけだぞ?」
仕方ないと口ではいいながら、その顔は嬉しさ満杯。溢れまくっている。
チョロい。チョロすぎる。
いいのかそれで?
「ほーら、佐保」
満面の笑みの彼。
私はポッキーに食らいついた。
「お前、ほんとに可愛いな」
そうだろう。そうだろうとも。
この後、私は五本目のポッキー獲得にも成功したのだった。




