↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん・らいふ  作者: 朝野りょう
ぺんぎん・らいふ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/318

3.意思の疎通は難しい(2)

 私はてってっと彼に向かって歩いた。

 

「ペン佐保?」

 

 そばまで寄ると、私はその嘴を彼の太腿めがけて振り下ろした。

 

「うあっ」

 

 僅かに肉を刺した感触。

 しかしジーンズだからか穴はない。

 さすがに頑丈な布地だ。

 

「何をするんだ!」

 

 彼の声もさすがに険しい。

 私はさっと後方へと跳んだ。

 

 で。

 

 転んだ。

 

 

「ペン佐保!」

 

 ズデッと仰向け。

 今なら変な呼び名も気にならない。

 天井が遠いよ。

 

 後方に華麗に飛び退る予定だったのだが、練習なしではさすがに天才の私にも無理だったらしい。

 ああ無情。

 

 

「大丈夫か、ペン佐保? そんなにポッキーが食べたいなら……三本くらいなら、食べていいから。無茶するなよ」

 

 彼は私の身体を起こした。

 だから、そういう問題じゃないんだよ。

 私はぺんっと彼の手を払うと、足を踏みだした。

 

「ペン佐保?」

 

 部屋の中を歩いた。

 無心。

 そう、今の私に必要なのは無心。

 

 ちょっとカッコ悪かったな、という照れではなく。

 ポッキー三本だけかという怒りでもなく。

 元に戻れないのではないかという不安でも、なく。

 私に今必要なのは、無心になることだ。

 

 

 ぽてぽて。

 

 ぽてぽて。

 

 

「ペン佐保、ほら」

 

 彼は箱から取り出した一本のポッキーを手に持って、私に見せた。

 食べさせてやるから?

 チッ。

 

 

 ぽてぽて。

 

 

「ペン佐保ー、機嫌を直してくれよー」

 

 だから、そういう問題じゃないんだって。

 私は言葉を無視して歩いた。

 

「悪かったよ。本当に、身体に悪いんだぞ?」

 

 

 ぽてぽて

 

 

「ペン佐保」

 

 

 ぽてぽて

 

 

「佐保」

「ゥアッ!」

 

 呼び捨てにするとは何事かっ!

 全然、反省しとらんな、お前。

 

「何だ、名前が気に入らなかったのか。ペン佐保より、佐保の方がいいか。そうだよな」

「ゥアッ、ゥアッ」

 

 馴れ馴れしく呼び捨てにするな!

 と激しく抗議の声を上げたが。

 理解はされなかった。

 

 抗議の声は、佐保と呼んだら返事を返したということで、否定ではなく同意したと見なされたらしい。

 

「ほら、佐保。ポッキー食えよ」

 

 彼には私の喜びも怒りも判断できないことに気がついた。

 人というのは自分の見たいものだけを見、信じたいことだけを信じるものだ。

 よく知らぬもの同士であればなおさらに。

 

 笑顔でポッキーを差し出す彼のカン違いを正すのは、難しいだろう。

 

 だが、まあ。

 ペン佐保よりは、マシか。

 そう自分を慰めるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字などありましたらぜひ拍手ボタンでお知らせくださいませ。m(_ _)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。