8.夏休みがやってきた(3)
一緒の映像を撮るという名目で毎日のように二人でタブレットを見て勉強していると、最初のように気が散ることもなく慣れてしまった。
英語の授業なんて、耳元でネイティブか?という発音で喋ってくれるし、会話形式で教えてくれるので最高だ。
それが同調している時だけでなく、人間の姿の時でも、学校でも、キタミがそのポジションに座るようになったのが、やや弊害といえるだろうか。
つまり、やたらベタベタしているカップルのような…。
「本当に、仲がいいのね」
八坂さん、視線がっ、視線が冷たいよ。
普通の人なら近くに座っているのを見ても、チラ見くらいで素通りだというのに、八坂さんだとそうはいかない。
さすがに一週間や二週間では八坂さんはキタミや私を忘れたりしないらしい。
黒沢が同じクラスなのもあるのだろうが、特殊な人だ。
「キタミ、ちょっと暑い、かな」
誤魔化すように笑いながらお尻で横にずれようとしたが、キタミはついてきた。
黒沢がいるからだな。
フレンド自慢。哀れ、黒沢。
私達は期末考査の最終日、テストを終えた後、屋上に来ていた。
私達、もちろんそれは私とキタミ、黒沢と八坂さんである。
お菓子をつまみながらテストの開放感を満喫するため、ではない。
テストの結果が返されると後は夏休みに突入する。
八坂さんはフレンド登録を承諾していない。
黒沢は笑顔を保っているが、いつもに増して存在感が希薄になっている気がした。
そんな黒沢に一緒の映像を何度も送りつけ、今もこうしてフレンド自慢をしているのだから、キタミも相当、黒沢に対して思うところがあったらしい。
「ねえ、米田さん。米田さんは夏休みどうするの? どこかの夏期講習に行くの?」
夏休み、そういえば具体的なことは考えていなかった。
毎日キタミのところで勉強して帰るのが続くと思っていたが、約束しておかないと学校で顔をあわせることがない。
「キタミ、夏休みもキタミの家に勉強しに行ってもいい?」
「いいよ。毎日迎えに行くよ。ダメな時だけ連絡くれればいいから」
えへへへ。
と思ったが、八坂さん、目が厳しい。
わかってるよ、その目は黒沢向けだよね。だよね?
「週に1回でいいから、私も一緒に勉強仲間に入れてくれない?」
八坂さん、なんと勇敢な提案なのだろうか。
それほど親しくもない私とキタミと勉強仲間になる。断られることも覚悟の上で、なかなか頼めるものではない。




