8.夏休みがやってきた(2)
キタミはセットを終えると、私のすぐ後ろに座った。
一緒の映像を撮るためだろう。
だが、近すぎる。
キタミは私の頭の横からタブレットを覗き込む格好になっていて、邪魔というか気になって勉強できない。
「どうして今日はそんなに近くに座るの?」
「二人で仲良く勉強しているようにみえるだろ?」
それはわかるが、気が散る。
普段っぽくない。
いつもの様子でいいのではと思ったが。
「後で編集したやつを黒沢に送ってやろう」
フレンド自慢、好きだな。
少年に送っても自慢にならないので、黒沢なのか。黒沢も気の毒に。
「黒沢にフレンドができた時に、やり返されるんじゃないの?」
「黒沢はしないよ。機械系が苦手だから、あいつ」
機械が苦手な宇宙人もいるとは知らなかった。
宇宙人も幅広いらしい。
「佐保は…どうして黒沢は呼び捨てなんだ?」
え?
しまった。呼び捨ててたのか、私。
内心では、黒沢はくん呼びしないから。油断した。
「キタミがそう呼ぶから、うっかりしてた。黒沢くんだよね。ごめん」
「佐保が呼び捨てにするのは俺だけかと思ってたけど、他にもいるのか?」
「え? 他? いないよ。失礼だったよね。ごめん」
キタミは思いの外、不機嫌そうな顔をしていた。
そういえばキタミのことも最初は北見くんと呼んでいたのだが、内心ではキタミと呼んでいたのでいつの間にかそう呼んでいた。
「えーっと、キタミくん。ゴメンなさい」
「俺はいいよ。親しくなったら呼び捨てになるんだろ? 佐保は黒沢と、仲いいのか?」
「全然!」
「なら、どうして呼び捨て?」
「それは……残念な人だから?」
「残念?」
「そう。ちょっと残念な感じの人。顔もよくて頭よさそうなのに、八坂さんに何度も振られてる残念な人」
言葉にすると、ひどいな、私。
正直に言いすぎた感はある。だが、言葉は元には戻らないのだよ。
「俺は? 俺も、残念だから?」
「違うよ。キタミは、キタミだから…」
私、本当に説明が下手だ。
友達だから。イケメンでペンギン世話好き変人だから。
ダメだ。どれも説得力がない。
キタミは黒沢とは格好良さも残念感も全然違うのだ。
ああ、口ではうまく表現できない。
「別に、どう呼んでもいいけど…佐保、黒沢のフレンドになりたいとか思った?」
「絶対にない!」
「そっか。なら、いい」
キタミ、拗ねている?
拗ねる? キタミが? うわー。うわー。うわー。
嬉しい、かも。




