8.夏休みがやってきた(1)
キタミはあの少年の映像を見て、俄然一緒の映像に意欲をかきたてられたらしい。
部屋にあるカメラには全部その処置を施したという。
「で、そのカメラ、どこにあるの?」
私はキタミの部屋を見回した。
それっぽいものはない。
「教えたらカメラを気にしてしまうだろ? 普通の佐保がいいんだよ」
キタミは笑って教えてくれない。
そもそも室内には物が少なくて、家具や壁しかカメラを置く所がないはずだが。
うーんと私が壁に向かって唸っていると。
「防犯用のカメラやセンサーをたくさんセットしてるから、佐保にはどれがカメラかわからないんじゃないか?」
たくさん?
いいや、一つも見つけられないが?
あるのか? どこに?
「現地生物に傷を負わせたりはしないようになってるから、心配しなくても大丈夫だよ」
そんなことは訊いてない。
現地生物にはってことは、相手が宇宙人なら傷を負わせるということ?
なんと物騒な。
宇宙人のルールはよくわからない。
とりあえず壁は全部カメラだと思っておこう。
別にここで着替えることはないのだから問題はないはずさ。
さて。
「同調するっ」
私はそう言うと、グインッと視界が動いて疑似体に同調した。
同調はほぼマスターした。
言葉に出して指輪が熱くなると同調できるのだ。そうならなかったのは、あの子が同調しろと現れた時だけ。
キタミは指輪にはそんな機能はないというので私の意識の問題らしいが同調できればいいだろう。
で、解除も同じ方法でできそうなものなのだが…。
「解除するっ、解除っ」
相変わらず、無反応。
解除はまだ自分でできたことがないのが不思議だ。
忘れてもキタミのフォローを取り付けたことで不安要素はぐんと減っており、キタミと一緒の映像も手に入る。
もう成功してもいいと思うのだが。
「佐保は本当に解除したくないんだな」
このキタミの嬉しそうな反応がいけないのではないかと思う。
失敗するのが可愛いくてたまらないといった顔をする。
その顔を見るのが、私は好きで。
マズイぞ、私。
「先に同調している私とキタミの映像をとることにしよ!」
「そうだな。教科は何にする?」
「英語」
キタミはマイテーブルにタブレットをセットしてくれる。
同調する前に自分でセットしとけよと思いつつ、整えられるのを待つ。
後で映像を見たら、キタミも下僕に見えるかもしれない。
貢ぐのが好きな宇宙人だし、ま、いいか。




