そのじゅうに
「え……? あんたがフェルナンド……? でも名前……」
「ああ、人間の感覚だと男っぽく聞こえるらしいわね。私たちエルフにとっては普通の女名なのだけれども」
フェルナンドと名乗った少女は背丈は170セメルトほどだろうか。帝研の一員である証である朱色のローブを纏い、禁止の髪と笹の葉を思わせる長い耳を持つ美少女である。人間なら大人の男と比べて遜色ない身長でありながら、幼さを感じさせる顔つき。
なるほど、これが種族差というものか。エルフを見るのは初めてだが、森の妖精といわれるにふさわしい美貌である。
帝研のローブは階位によってその色が定められている。帝国の法によって帝研以外のものがその色のローブを着ることは許されていないのだ。……尤も、法と慣習を混ぜると、ほぼ全てのローブがそんな感じになっているのだが。
帝研のローブは下級魔法使いが朱色、上級魔術師が紅色、そして筆頭魔術師が赤、と定められている。つまり、彼女は帝研の中では下っ端ということになる。顔つきも幼いし、まだ見習いなのかもしれない。下手をすれば未成年か。
「えっと、君? 私の話聞いてる?」
はっ! ちょっと見とれていたらしい。ぜんぜん返事してなかった。
「あ、ああ。ちょっと見とれてたけど大丈夫。話は聞いてる。よろしく、フェルナンドさん」
「フェルでいいわ。資料には15ってあったから私のほうが年上だけど別に上官でもないし。あなたのことはウィルでいいかしら?」
「え゛? 年上って……いくつだよ」
「23よ。ま、エルフの中じゃまだまだ子ども扱いなんだけどね。おかげで故郷じゃ未熟者扱い、人間の世界ならって思って出てきたけど、いくら種族が違うからっていっても1年やそこらで出世できるほど甘い世界じゃなかったわ」
23……み、見えねえええええ!
「さ、さすが寿命千年の種族。……あれ? 千年生きるなら23って比率的に赤ん坊並み?」
「そこまでひどくはないわ。千年生きるって言っても実際にそこまで生きる人は少ないのよ。100年かそこらで病死や事故死する人がほとんどなの。
ま、エルフは25から30くらいで成人って所かな。早熟だと二十歳くらいでそう扱われるけど。人間でいうおじさんおばさんになるのは300過ぎくらいからだから人間の感覚だと薄命に写るかもね」
……確かに。病気や事故で死ぬ確立が毎年1%あるとして、100年も経てば生存率は4割未満だ。300年も生きるエルフなんてほんの数%ということか。
「さ、それじゃあ早速山賊退治に行きましょ。うわさは聞いてるわ、頼りにしてるからね、オーガ退治の英雄さん?」
そうフェルは言って俺の腕にからみついてきた。年下をからかっているのか、エルフ的に子供だからなのかはわからないが、これだけの美人にそんなことをされると、こちらとしてはどう反応すればいいのかわからず、彼女に振り回されるままであった。
……腕に当たる柔らかい感触があまりに小さかったのは、エルフの種族特性なのか、彼女の個人的資質なのか……興味はあったが、たぶん口にしたら殺されるんだろうなあ……。




