そのなな
さて。ハーネス村といえば温泉である。というか、温泉以外に特筆するほどのものは何もない。
とんだゴブリン退治になってしまったが、ゴブリン退治が終われば温泉には入れる、という約束のとおり、俺たちは交代制で温泉に入れることになった。一度には入れるのはせいぜい10人前後というところだが、半日がかりで交代すれば、まあ全員何とか入れるというわけだ。
4組目である俺の番がようやく回ってきた。すでに時刻は終わりの刻を超えている。少々肌寒いが、春先で機構も安定してるし、湯冷めして風邪を引くということもないだろう。
フィンケ隊長と、オーガ殺しの口裏あわせの話し合いをしていたため、少し出遅れた。他のみんなはもう温泉に入っているようだ。温泉は男女別に分かれてこそいないが、覗き防止のためだろう、木の塀で囲われており、入り口に脱衣小屋がある。なので俺はさくっと裸になり温泉へ向かった。
「ごめんごめん、ちょっと遅れた」
と挨拶しながら入っていくと、みんなの視線がこちらへ向き、そして固まった。一体どうしたんだ?
「……で、でけえ」
モデストが俺を見ながらそんなことをつぶやく。……いや、あいつの視線は俺の顔じゃなくてもっと下……っておい!
「いや悪い悪い。ちょっとびっくりしただけだって。そんなむくれるなよ」
「むくれてねえよ」
温泉に鼻までつかる俺に謝るモデスト。むくれているわけじゃない。ただじろじろ見られたのが気恥ずかしかっただけだ。人に裸を見られることって少ないからさ。
しかし、裸といえば、とふと周りを見渡してみる。兵士なんだから当然だが、どいつもこいつも鍛えられた体をしている。無論俺も負けてはいないが。だが、そんなまさに男、マッチョです、という体格とは裏腹に、驚くほど誰も体毛が生えていない。
髭は生えている。髪や眉などはいうまでもない。だが胸毛だの腋毛などの、いわゆる無駄毛が誰一人生えていないのだ。もちろん俺も。例外は下の毛くらいか。もちろん脛下じゃない。
親父も生えてなかったし、体毛が薄いというか基本的に生えないのはこの世界の人間の特徴なんだろう。異世界ファンタジーという時点で想像はついていたが、やはりすでに俺はホモサピエンスではないようだ。子供のころお袋と風呂に入った記憶からいうと、女性は男には生えてる部分も皆無のようだが……。
「ところで、何でお前他の連中じろじろ見てんの? はっ、まさかそんな趣味が!?」
「ねえよ!」




