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てきとー転生英雄譚  作者: 腐れ紳士
じっせんのしょう
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そのろく

「それではハーネス村を襲ったゴブリン壊滅と、オーガの撃退を祝って」

「「「かんぱーい!」」」


 ハーネス村の中心、村人たちが集まり会話を楽しむ広場はその夜、村人と第3小隊のほぼ全員が集う宴会の会場と化していた。

 無論、こんな小さな村であっても酒場くらいはある――余談だが、小さな村の商店は、店名などはないらしい。まあその種の商店が村で一軒、という世界なので「酒場」だの「鍛冶屋」だのでわかってしまうわけだ――が、兵士と騎士合わせて46名、ハーネス村の人口は87名。うち20人が子供故不参加、合わせて113名という数を許容するほどの広さはないのであった。

 まあ村の脅威が取り除かれた日だし、こちらとしては戦友が5名散っている悲しみを酒で流すという意図もあるので、みんなでどんちゃん騒ぎをした方がいいだろう、と村の広場で、と相成ったわけである。

 村中の人々が食材を持ち寄り、奥様方が腕によりをかけてごちそうを作る。俺たち軍人組は何もせず歓待されているだけだが、ゴブリンのみならずオーガとまで戦っているためのゲスト扱いだ。


「いや、本当にありがとうございました。ゴブリンもですがオーガなんて化け物が村を襲ってたらと思うと」

「いえ、こちらで対処できる相手でよかったですよ」


「お兄さんたちがオーガを退治したんでしょう? かっこいいなー」

「へっへっへ。どうだいお嬢ちゃん、今夜はその英雄様と二人っきりで歓談とか」

「や~ん、お兄さんのスケベー」


 村長とフィンケ隊長が形式上の――村長にとっては形式ではないのかもしれないが――あいさつを交わし、一方では兵士たちと村人たちが歓談している。って誰だ村娘さん口説いてるのは!?

 いやいいけどさ。責任取れよ。前世と違って娼婦や奴隷以外に手を出したら責任とらないとすごい非難されるぞ。権力者はもみ消すが。


「しかし、オーガ等……どこからやってきたのでしょうか……?」

「さあ……? あるいは、魔王領かもしれませんな。確かこの辺からはかなり近かったと思いますが」

「魔王領! まさか……いやしかし……」


 魔王領。その名のとおり、魔王と呼ばれる存在が住む領地だ。帝国の南西部に位置し、強大な魔物が多数住み着いているという。帝国の国境警備兵が百戦錬磨であることと、魔王領と帝国が一国に匹敵するほどの広大な大森林によって阻まれていなければ帝国はすでに滅ぼされていたかもしれない。

 魔王領の由来である魔王は、わずか30年前に現れた。無論、魔王と言う言葉自体ははるか昔から存在した。いわゆる、伝説の存在というやつだ。


 伝承によれば、神話に刻まれた魔王は身の丈3メルト半の異形の怪物で、裸であるにも関わらず全身が漆黒の鎧に覆われているかのようであったと言う。その手に握られるは全長が2メルトにもなる漆黒の大剣。神話の時代に神々に追放されし魔神の一柱より授かりしそれは、鍛え抜かれた戦士を軽々と両断した。さらに魔王は邪悪なる魔術にも精通し、ただの一撃で地平線の彼方まで荒野に変えることすらできたとされる。

 けれど、その魔王は神話の中、勇者によって打ち倒された。勇者は黄金に輝く聖剣を掲げ、白銀の鎧に身を包んでいた青年であったと言う。

 勇者と魔王の戦いは熾烈を極め、七日七晩続いたと伝説は謳う。八日目の朝日が昇る頃、ついに勇者は魔王を倒したとされるが、力尽きた勇者は魔王の部下の手により殺された。

 かくして、力と不死を求めて魔神と契約し、異形と化したエルフの王とエルフの奴隷であった人間の反乱軍を導いた勇者の物語は終わり、人間の時代が始まった。――およそ五千年前の話だ。


 その伝説が現代によみがえったのは先にも触れた30年前。厳密には28年だったか。帝国の南、帝国に従属するひとつの小国に魔王を名乗る化け物が現れたのが始まりだった。

 当然だけど、“自称”魔王など、誰も信じなかった。そもそも魔王は死んだはずだし、それ以前にただの伝説に過ぎなかったのだから。

 だがそれは事実だった。……少なくとも、そうと信じるに足るだけの存在であった。

 “自称”魔王は、確かに漆黒の鎧に覆われたように見えたし、身長も3メルト半近くあった。さらに巨大な剣を持っており、その一撃でかの国の兵士を両断したとか。……その国は、わずか3日で滅ぼされた。

 当然ながら、近隣の国々は魔王を倒そうとした。自分たちの国にまで攻めてこられてはたまったものじゃないし、魔王を倒せばその領地は丸々自分たちの国に吸収できるから。

 こうして近隣6カ国で編成された連合軍は確かに強大で、指揮官や作戦参謀も高名な実力者が選ばれた。たぶん、強大な帝国でも生半には勝てない相手だったろう。

 だが、“自称”魔王の真価は、その大軍に対してこそ発揮された。雄雄しく魔王の下へ向かった軍は、魔王が放ったと思しき漆黒の光によって一撃の下壊滅した。犠牲者の数3万8千。魔王の攻撃はただの一度であったにもかかわらず、連合軍の未帰還率は9割に上った。

 こうして“自称”魔王は、世界中から正式に魔王として認められ、次々に近隣国を滅ぼし、一方で己に忠誠を誓うものには力を与え、異形の怪物とした。いわゆる魔族というやつだ。人とよく似た姿を持ちながら、決して人ではない異形。まあ、前世の知識から言えば、サキュバスなどに代表される人型悪魔のような感じの外見。角とか翼を持っている。一方で、ヤギの頭を持つ悪魔、というような外観の持ち主はいないようだ。そういうのはどちらかというと魔神の外見らしい。

 無論帝国とて、魔王には立ち向かった。だが、固まっていては漆黒の光にやられると散開しても、その尖兵である魔族は非常に強く、最弱のものでさえ並の騎士を凌駕したそうだ。結局、5年にわたり魔王の侵攻を食い止めていたが、そのころなにやら神様から啓示が下ったらしい。もちろん俺はその内容を知らないが、その啓示の結果、帝国は全兵力の4割を投入し、魔王へと立ち向かうことになった。

 結果は惨敗。ほぼすべての兵士が帰らぬ人となった。ただ、その遠征は魔王を倒すことではなく、別の目的があったようだ。軍が壊滅する代わりに、100人を超える神官の手により、強力な結界が張られ、魔王は城から出ることが叶わなくなったらしい。で、その結界を張るための最後の一仕事をしたのが当時帝国最強の騎士といわれていたディーター・フォン・ランツィンガー。彼は最前線で戦い、魔王に正面から挑み、命を代償に結界を張るための何かを成し遂げたのだという。なので帝国にはランツィンガー記念日という祝日がある。

 その魔王領から魔物がやってくる。結界が封じたのは魔王であって魔物ではないから、決しておかしな話ではないが、そうなるとこの辺も危険ということだろうか? 以前から現れるならいまさら驚くような話ではないのだし、そうすると何か理由があって今まで通らなかったルートでこちら側へ来るようになった……? 何か、嫌な予感がする。

 みんながのんきに宴会を盛り上げる中、俺は隊長と村長の話を横で聞きつつ、嫌な予感に包まれていた。

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