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てきとー転生英雄譚  作者: 腐れ紳士
じっせんのしょう
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そのよん

 洞窟の前に戻った時、そこにはゴブリン以外に、いるはずのない4メルト近い人型が3人いた。……そして、既に物言わぬ肉塊と化した同僚兵士が5人。巨人はその手に丸太のような棍棒を持っている。あんなもので殴られれば、そりゃあ人間なんて肉片になるのみだ。

 ――オーガ。それがこの目の前の魔物の名前だ。一般的には巨人と呼ばれているが、賢者による分類では妖魔に当たるらしい。

 そもそも巨人種は竜種、悪魔と並ぶ最上級の超越種族であり、巨人殺し(ジャイアント・キラー)、あるいはより高位の存在に対する特攻概念を持つ攻撃以外は、無条件ではじく、という特性を持っている。……まあ、これ自体は超越種族全般に言えることだが。

 余談だが、この手の“超越種殺し”で最も多いのは悪魔殺し(デーモン・キラー)である。最も人間の敵に回りやすいためだ。一方巨人殺し(ジャイアント・キラー)は最も少ない。なぜなら、巨人は基本的に温厚で、人間に友好的である上に、人間にとって価値ある財宝もほとんど持っていないためである。常人が何百人いても勝てる相手ではなく、倒してもメリットがなく、向こうから襲ってくることもない。結果、倒すための力を用意されることもないというわけだ。


 さて、幸いにも、オーガはそのような理不尽種族ではないため、通常の方法、つまり、人間が死ぬような攻撃で、殺せる存在である。その巨躯から繰り出される怪力と、タフネスを突破できれば、の話だが。

 以前倒したトロールも強敵だったが、それでもあれは、正規の騎士が二人、ないし平均的な魔法使いと護衛がいれば倒せる程度の相手だったが、オーガは単体で騎士10人と渡り合えるという、妖魔の中でも最上級の難敵だ。それが3人、こちらの人数だけなら50人と優位に見えるが、新兵と非精鋭騎士の混合舞台の上に、すでに5人が倒れている状態では士気の上でも能力的にも、余裕など持てない。まして、ゴブリンだって30匹はいるのだから……!

 おそらく、このオーガはゴブリンの味方なのだろう。ゴブリンには目もくれていないし、ゴブリンもオーガに付き従っている。なぜこんなことに、などという考察は後回しだ。三竦みが期待できない以上、速やかにオーガを排除しなければならない。

 残りの魔力をすべて、身体能力強化にまわす。権力者にこれがばれると面倒なことこの上ないのだが、目の前のピンチにそれを意識する余裕は吹っ飛んでいた。全身に力がめぐる。腕力も脚力も、ともに4倍に強化される。

 もともと俺の身体能力は常人より高い。強化後の能力を見れば、すでに力もスピードも、常人の5倍を超えている。オーガの腕力はおおよそ常人の5倍、身のこなし自体は大差ない、といわれているので、タイマンなら確実にいけるはず、だ。……まあ、身体能力を強化する魔法では、パワーやスピードは増えても、耐久力だの硬度だの葉変わらないので、オーガ相手では防御は紙同然なんだが。

 オーガの腕が振りあがる。恐怖と混乱で腰が引けている兵士たちは、思うように対応ができない。だから、その隙をついて、全力で側面からオーガの頭に剣を叩きつけた。

 悲鳴を上げる余裕もなく倒れるオーガ。だが、岩より硬いといわれるオー顔の頭蓋骨に思いっきり剣を叩きつけたせいだろう。剣に思いっきりヒビが入っている。こりゃ次は折れるな。それでもオーガは残り2人。俺が一人を受け持ち、生き残ってる40人強で残りのオーガとゴブリンを相手取るなら、勝算はあるはず。


「マイスター! 君には子供たちの護送を命じておいたはずだが!?」

「そちらはすでに完了済みです、隊長。子供たちは村長に預けてまいりました。一匹は俺が相手をします。残りの3匹をお願いできますか?」

「馬鹿なことをいってはいけません! 不意を撃つならともかく、オーガ相手にタイマンなどできるはずがないでしょう!」

「いえ、いけます。相手が一人なら、油断さえしなければ負けはない。ただ、剣にヒビが入ってるので……悪いけど、ちょっとその槍貸してくれる?」


 フィンケ隊長に大見得を切り、近くの兵士から槍を借りる。不慣れな武器だが、まあ心臓を串刺しにするくらいはできるだろう。魔法で強化した俺とでは速度が違う。

 ヒビの入った剣を鞘にしまい、速度を殺す盾を捨てる。槍を握る腕に力がこもる。心は落ち着いている。冷静に、彼我の戦力を計り、完勝の自信が沸く。後は一言、上司であるフィンケ隊長が口を開くだけだ。


「……わかりました、君を信じましょう。マイスター卿は目の前のオーガを、全員散開! 残りのオーガとゴブリンを退治します! 騎士は剣を抜きなさい! オーガへと挑みます。しかし我々の役目は囮、オーガの注意をこちらにひきつけている間に、後衛から弓で射殺します!」


 フィンケ隊長の命令に全員が応え、それぞれの役割をこなすべく動き始める。

 まずは俺が槍を構えて突貫。目の前のオーガが反射的に棍棒を振り回すが、寸での所で一時停止、そのまま目の前の腕に槍を突き刺す。

 加速した勢いを乗せられなかったため、そこまで威力は出なかったが、オーガのうち一匹は痛みと怒りの咆哮を上げ、こちらへと襲い掛かってきた。

 尤も、魔法で強化された俺の速度はすでに時速にして100キメルトを超える。それが人間特有のストップ&ゴーで動くのだから、捉えられる道理はない。カウンターで槍を突き刺す。

 この戦法でタイマンが成立するかぎり、かすり傷一つ負わない自信があるが、最大の難点は、地に足をつけていては急所に届かない事だ。なにせ俺はオーガの腰にも届かない。

 跳躍すれば届くが、一度宙に舞えば後は慣性に従って移動するのみ。いい的だ。ピッチャー返しでミンチになる自信があるね。あんなの不意打ちでしかできぬ。

 よって、カウンターを繰り返しつつ、末端から潰していくことにした。

 棍棒を回避し、その手首に槍を刺す。頭蓋骨に限らずオーガの骨は岩のように硬いので出来るだけ避ける。20も穴を空けてやれば、流石に棍棒を持てなくなったようだ。

 痛みで戦意を失いかけたオーガが逃げ出すより早く、頭を下げ、オーガの股を潜る。一瞬、腰ミノ一枚のオーガの見たくもない男の象徴が頭を掠めたが、込み上げてきた吐き気を抑えて背後へ。

 槍をその場に投げ捨てて剣を抜き、そのまま両足の踵の腱、つまりはアキレス腱に斬りつけた。右足、左足と切ったところで剣が折れてしまったが、目的を達成できたので問題ない。足の腱を切られれば、当然のように倒れる。

 ……厳密に言えば、アキレス腱が切られただけでは、歩行は困難になるが、絶対に歩けないというほどではない、と前世で聞いたことがある。ただし、それは常時であれば立ち上がれる、という類の話であり、戦闘という激しい運動のさなかであれば確実に転倒し、そして致命的な隙となる。

 それでも果敢にも腕を振り回し、殴りかかってくるあたりはさすがはオーガといったところであるが、そんな攻撃が加速した俺にあたるはずもない。捨てた槍を拾い、悠々と余裕をもって肉薄し、心臓を貫いた。

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