そのじゅういち
そして騎士団の試験が始まった。
騎士団の試験は座学、礼儀作法、馬術、そして剣術の4科目から成る。内、座学は非常に楽だった。というか、騎士団の座学で求められているものって、前世の基準で言うと小学校レベル卒業してないんですが。
礼儀作法と馬術は、ちょっと苦労した。どっちも親父から習ってたけどな。特に礼儀作法は自信がなかった。騎士団長の娘さんを相手に貴婦人に対する礼儀とか、ダンスとか……。
あ、手の甲にキスをするって、前世ではどうか知らないけどこの世界では実際には唇つけちゃいけないんだとさ。遠目には口づけしたように見える程度まで近づける、だけらしい。まあ、見知らぬ男に手の甲とはいえキスされたらいやだわな。
で、最後の試験。それがこの剣術だ。ルールはいたって単純。担当の騎士と魔法抜きの一騎打ちをするだけ。勿論模擬剣で。
「そして私が本日の担当騎士だ」
ってあんた受付の時の中隊長じゃねぇか!?
「うむ。推薦を4家分も持ち込み、しかも内一つは侯爵家。気になって調べてみたところ、貴様、あのターニア候の四男坊に勝つ寸前だったとか。どれほどの腕か気になってな。私自ら試験しようと思ったわけだ。
なに、試験は公正に判断するから思いっきり来なさい」
……このおっさん、絶対体育会系バトルマニア。間違いない。前世の伯父がこのタイプだった!
まあ、このタイプは力に関しては真摯だから試験は公正であること疑いないが。
とにかくこれが試験である以上、全力で行かせてもらおう。
「はじめ!」
審判役の騎士が開始を宣言する。同時に俺は大上段に剣を構え、裂帛の気合いと共に切りかかった。
予選の時に俺に負けた奴に似た流れだが、あいつとは速度も違うし、何よりこの奇襲で勝てるとは思っていない。必ずかわされ反撃される。
「は、甘いぞ坊主!」
盾で受け流され、剣を一閃する中隊長。だがそれは織り込み済み。バックステップで回避しそのままリーチの長さを活かして切りつける。
「ほう、やるではないか」
当然のようにそれを受け流し、更に切りつけてくる中隊長。それを受け流し、反撃……できなかった。
受け流した次の瞬間、盾を叩きつけられバランスを崩したのだ。それ自体は致命的な隙ではないが、こちらの反撃を封じ、連続攻撃を行うには十分な隙。さらに盾も使ってフェイントを仕掛けてきやがるのだ、この親父。実際に盾の攻撃で体勢を崩されているので、警戒を緩めることができない。
だんだん、反撃をする機会が減り、気が付けば防戦一方になってしまった。ってこの中隊長、親父より強くないか?
「もちろんだ。私は昨年の騎士馬上試合の優勝者だぞ」
「ガチで騎士団最強じゃねーか!」
思わず悲鳴を上げた。そしてそれが致命的な隙となり、中隊長の剣が首に突きつけられる。
「……ギブっす。さすがにここから逆転する手は思いつきません」
おとなしく、俺は両手を上げた。
「思ったより手間取ったな。あと5手は早く終わらせられると思ったんだが。なんにせよ、結果は明後日までに伝えよう。もし受かった場合のスケジュールはその時に伝えるので、うかつに予定入れないように」
「わかりました」
くっそー。せっかくだから勝ちたかったなあ。まあ魔術抜きでは親父に勝てない俺が、親父より強い人に勝てる道理はないか。
「……よし、決めた」
「ん? 何を決めたんだ?」
あ。思わず口に出しちまった。
「……あ、あ~。なんと言いますか」
「なんだ、独り言か? だが、決意表明を他人に聞いてもらうのはいいことだぞ。自分しか知らないといくらでもごまかせるからな」
「……わかりました。じゃあ言います。……いつか、魔術抜きの剣術で、正々堂々、あんたに勝てるようになってやる。そう、目標を立てたんです」
ビシッと指を突きつけて宣言してやった。中隊長はしばし固まっていたが、ややあって笑い出した。
「ぶ、くくく……くははははは! そうかそうか! 俺より強くなるか! いいぞ、貴様親父より気宇がでかい! あいつは俺より強くなるなんて宣言したことないからな! くはははは! ああ、もしお前が騎士になれたなら、いつでも稽古をつけてやろう。俺もライバルがいれば張り合いが出るからな!」
ばしばし肩を叩かれ、試験会場を後にすることになった。……あ。
「ところで中隊長さん、名前なんて言うんですか?」
「最初に聞けよ!? レオポルド・フォン・シリーだ!」
気が付けば主人公最強タグ付いてるのに主人公二連敗。
申し訳ありませんが、主人公が最強化するのはもう少し先の話になります。なのでタグ変えました。




